第15章 12ページ目 弱ったときの特効薬。
ターゲットを冷蔵庫からそのまま食べたりできるお菓子やインスタント類が詰め込んである棚に切り替えて、あらためてゴソゴソ何かないかと物色していると、また強い痛みがやってきてその場にゆっくりとしゃがみ込む。
ううううー、もうヤダぁあ…情緒もしっかり不安定で勝手に涙がぽろぽろこぼれてくる。
うっ、ずびっ、と涙を手で拭って鼻をすすっていれば、なにか聞こえた気がして肩がびくっと揺れた。よく耳を澄ませてみる…足音だ、ゆっくりとでも確実にこちらへ近づいてくる。
さ、さすがにこんな子供みたいに泣いてるとこ見られるのは恥ずかしい…!!
慌ててシャツの端っこで顔を拭い、何でもない顔を作る。
よし。
「おわっ、!?そんなとこで何してんだよっ」
「五条くん……へへ、おはよう」
まだ床にしゃがんだままだったわたしに驚いたらしい五条くんが、びびったー!と言いながら胸のあたりを手で押さえている。
朝からドッキリ仕掛けてごめんね。
いや、わざとじゃないんだけどね。
お腹にできるだけ響かないようゆっくりとした動きで立ち上がり、さり気なく壁に寄りかかる。
「はよ…随分早起きだな。あ、わかった!腹が減って目が覚めたんだろ」
いつものようにニヤリと口端を意地悪く上げる五条くんは、朝から元気そうでなによりだ。
「えへへ、そうなんだよね。なにかすぐ食べられる物って、ないかなぁーって探してたんだ」
「なんだ、マジかよ。そんなに腹減ってんの?」
「うん、用意するのが面倒、な…っ…」
返事の途中でこれまた強めの痛みがきて、顔を顰めて言葉を止めてしまう。
これ、は、いたい、むり…。
我慢しきれずお腹を抱えて壁伝いにずるずるずるり、体がゆっくり床に近づいていく。
「お、おい、?どうした?」
「……ん……だい、じょぶ…」
本当は全然大丈夫なんかじゃないけど、焦ったような声の五条くんについそう返してしまう。
あーもうヤダ、ほんとヤダ、きつい、五条くんにちゃんと返事できない…。