第12章 9ページ目 たまにはこんな休日を。
驚いてそちらを見れば、開いた扉に手をかけて微笑む夏油くんの姿があった。
お休みだからか、やっぱり部屋着っぽい白のティーシャツに黒ジャージ姿で。いつもは頭の上の方できっちりお団子に結ってある髪を、ゆるくハーフアップにしている。
うん、その髪型もよく似合ってるね!
「夏油くん!」
「傑、驚かせるなよ。小動物がビビるだろ」
え、小動物?どこどこ?
きょろ…と首を動かすと、五条くんの手がぽんと頭の上に乗る。
あ、わたしですか、そうですか、ですよねぇー…。
「いや、すまない。驚かせるつもりはなかったんだけど…随分と楽しそうだったから、邪魔しちゃ悪いかなとも思ってね」
声をかけるタイミングがわからなかったんだ。夏油くんはそう言うと、五条くんと似たり寄ったりの長い足を動かして横にある一人掛けソファに腰を下ろした。
夏油くん、いつからいたんだろう?
「邪魔じゃないよ~、とくに何もしてなかったし。ね?五条くん」
「ああ、の頬っぺたで暇潰ししてただけ」
…人のほっぺでヒマを潰さないで、五条くん。
「それは…なかなか魅力的な暇潰しだね」
きらん。真顔になった夏油くんの目が光った気がして、反射的にしゅばっと頬を手で覆ってしまう。
まさか、まさかね、しないよね夏油くん?
ドキドキしながらじぃいーっと見ていると、夏油くんは「冗談だよ」と言って笑った。
その後に続いた「…半分はね」の言葉は聞こえなかったことにしておく。
うんっ、きっと気のせい。
それから三人でソファーにだらりと座ったまま、とくに何をするわけでもなく。
たまに思いついたように話して、返事をして、だらだらだらり。
すぐ横の五条くんの頭がカクッと落ちるのに気づいて、夏油くんが豪快な欠伸をこぼすのを目にしたら、なんだか眠気がこちらにまでやってきたようで。
気づけば硝子ちゃんが戻ってくるまで、揃って仲良くお昼寝をしていた。