第12章 9ページ目 たまにはこんな休日を。
「あらためて言わなくっても、小さいですよ」
わたしが女子の平均身長を大きく下回っているのは、悲しいことに昔から変わらない。
それがどうしたの?
聞いてみてもはっきりとした答えはなく、やっぱり小さく「んー…」とか言いながらわたしの手をにぎにぎ。にぎにぎ。
いやほんとにどうしたの?
わたしの手はおにぎりじゃないから、そんなに握らなくてもいいんだよ。
おにぎりもね、何度も何度も握りすぎないほうがおいしいんだってさ。
お米がふっくらしていて、口の中でほわっと柔らかく崩れ広がるおにぎり。
ああ、おいしそう…ごくり。
「ふっ…」
頭上からなにやら小さく噴き出したような音が聞こえて見上げれば、五条くんが口元を手の甲で隠して震えていた。
ん?あれ、五条くん?
おっと、思わずおにぎりに思いを馳せてしまった。
気づかなかったけど、いつの間にか手を離してくれていたみたいだ。
解放されていた両手をぐっぱーしてから、もう一度頭上の五条くんを見上げてみる。
うん、震えているなぁ。
「五条くん?」
「っ………オマエ、食べ物のことでも考えてただろ」
えっ、なんでわかったの?
目をぱちぱち瞬かせて、五条くんのサングラスを見つめる。
あ、なんか五条くんの口元がひくひくしてる…
「ぶっ…はは、やっぱな!」
「ねぇねぇ、五条くん。なんでわかったの?」
わたし、なんにも言ってなかったよね?
もしかしてヨダレが…と思って口元にちょんと触れてみる。
「涎とか垂れてねぇよ。ただ、そういう顔してたからな」
そ、そっか、ヨダレ大丈夫?よかったぁ~。
ニヤニヤ可笑しそうにこちらを見て言う五条くんに、ひとまず安心してえへへと照れ笑いした。
「二人して何してるんだい?」
急に五条くん以外の声が聞こえて、ビクッと肩が揺れる。