第12章 9ページ目 たまにはこんな休日を。
反射的にしゅばっと耳を両手で押さえると、素早く五条くんから距離を取る。
「ブッ…ふっ、クク…顔、真っ赤…っはは…!!」
…って、笑ってるしいいーーっ。
ぷんす!と鼻息も荒く、もうすっかりお馴染みとなった大笑い中の五条くんを睨む。
ほんとに、もおおおっ、わたしは心臓がばくばくしているというのにこの人はぁっ!!
「五条くんのばーかばーかばーか!!」
五条くんの顔に狙いを定めてえいやっとクッションを振りかぶる。が、それはぼすりという鈍い音を立てることなく、あっさり無下限に阻まれた。
「馬鹿って言った方がバーカ」
「むきぃーっ、術式使うなんてズルい~!!」
「お前が言うか。だって、しょっちゅう俺らに結界ブン投げてんじゃねーか」
うぐ…それは、たしかにそう、だなぁ…。
役に立たないとわかったクッションを手離せば、まるで計ったかのようなタイミングでスッと五条くんの手がこちらへ伸びてきて、わたしの顎をガッシリと掴んだ。
そしてそのまま頬っぺたを両側からうにゅ~っと押される。
「どの口がズルい~なんて言ってんの?なあ?」
ちょっ、ちょっと力つよっ、強いんですけど?
タコぐちなってるから止めてぇ~~っ、うりうりしないでぇっ。
「ぎょ、ぎょめんにゃはい、じゅりゅくにゃいれふ…(ご、ごめんなさい、ずるくないです…)」
「ハハッ、なに言ってるか全然わかんねぇー」
こ、このやろう。
謝ってるんだから離してよぉう。
ハハハと楽し気に笑いながら、人の頬っぺたをもちもち掴んだりみょ~んと左右に引っ張ったりと好き勝手に弄る五条くん。
わたしに出来ることといえば、その自由に動く太い腕をぺちぺち叩くことくらいだ。
「なに、もう抵抗は終わり?」
「…おわりゅ」
うん、もういいよ降参だよ。
わたしも終わりにするから五条くんも終わろう?
まだニヤニヤ笑みを浮かべる五条くんを、ちょっと疲れた眼差しでじぃっと見つめる。
…あ、口がちょっとへの字になった。
んふふ、遊びが終わっちゃってつまらないって顔だなぁ。
でもこれ以上はわたしの頬っぺたが限界なので勘弁願いたい。