第12章 9ページ目 たまにはこんな休日を。
高校生にもなってひとりで過ごすのが寂しいとか、どうなの?
ちょっと言葉にすると恥ずかしいなぁ。
ふぬ~っと恥ずかしさと寂しさを誤魔化すように、両腕で抱えたクッションにぎゅむぎゅむと力を込めてやる。
「…?お前なにやってんの」
不意に部屋の出入り口の方から声が聞こえて、クッションから顔を上げてそちらを見れば五条くんが談話室に入ってくるところだった。
黒の長袖ティーシャツに黒のスウェットという部屋着に黒いサングラス、いつもよりふわふわしている白い髪の毛は毛先の一部がぴょんっと跳ねている。
もしかして、今起きたのかなぁ?
もう午前も十一時を過ぎようとしているけど。
そんな疑問はひとまずおいといて、聞かれたことに答えようとクッションを両手で掲げて見せる。
「ひとりで暇だからクッションとハグしてるの」
「いや、暇人すぎだろ」
ほんと何やってんだよ、と五条くんが呆れたように笑うのを見ながらわたしもえへへと笑う。
…なんだろう。五条くんが笑うのを見たら、さっきまでのつまんないとか寂しいとかいう思いがどこかへ吹き飛んでいってしまった。
今はもう自然と笑みがこぼれてくる…なんて、我ながら単純だなぁ。
「五条くんは、今日はお休み?」
「ああ、見ての通り…ふぁあ…」
「眠そうだねぇ」
「朝まで傑とゲームやってた。アイツはまだ寝てんじゃね?部屋静かだったし」
そう言う五条くんはぐあっと大口を開けると、再び端整な顔を崩して大きく欠伸をした。
こんな変な顔をしているのにじっと見ていられる顔面って…すごいなぁ。
元の造形がよすぎるんだね、きっと。
ほけーっと感心しながら眺めていれば、なぜか五条くんがサングラスを外した。
どうやら欠伸で涙が出たのか、長く綺麗な睫毛の先についた雫を指でちょんと拭っている。
うわぁ…きれい……絵になる、ってなんで?
寝起きなのに…寝癖ついてるのに……なんで?
Tシャツにスウェットで色気すら感じるとか……なんでぇえ??
同じ年頃の女子として、ちょっとどころか激しく負けている気がしてなんとなく自分の胸元にぺたっと手を当てる。
そのまま難なくストンと先を見下ろせた視線に、思わずスンッと真顔になる。
……い、いや、色気は胸だけにあらず。