第1章 1ページ目 初日!
目にはじんわり涙の膜ができはじめている。
そんなわたしに五条くんは「ンべろぉー」って長い舌を見せつけてくる。
うぐぐぐぐぅ…五条くんなんて…五条くんの…
呪力を手にぎゅいんと集める。
術式を展開させて、ぎゅぎゅっと圧縮してにぎにぎ。
「ハッ…!悟やめないか、大人げない。も落ちついて、ね?」
わたしのただならぬ様子に気づいたのか、夏油くんが慌てて止めに入る。
たぶん昨日、五条くんが無下限で弾いたわたしの圧縮結界ボールが夏油くんに跳ねてったから。
青い顔でギリギリよけた夏油くんを思い出す。
…あれはごめんだった、尊い犠牲にならなくてよかった。
「なんだよ傑、そいつの肩持つのか?」
「ちゃんって呼んでほしいなんて、可愛いお願いじゃないか。それくらいいいだろ」
げとぅくううん!!!!
なんていい人なのっ、ありがとう!!
これからは夏油くんに当たらないように、結界張った上で五条くんに圧縮結界ぶんなげるからねっ。
感激して両手をぎゅっと…したら結界ボールが邪魔だったからしゅるんと解いて消す。
いけないいけない、冷静にならないと。
びーくーーる。
担任の夜蛾先生に見つかったら、また怒られてデコピンされちゃう。
あれけっこう痛いんだよねぇ…たかがデコピンされどデコピン。
デコピン侮るなかれ。
すぅーはぁーーと深呼吸をして五条くんを見る。
「五条くん」
「…なんだよ」
顎をつんと反らして見下ろす五条くんは、その長身と真っ黒サングラスも相まって迫力抜群だ。
あ、ちょっと唇とがってる。
前言撤回。ちょっとかわいい。
「あの…ごめんね。五条くんのすてきな声で、ちょっと違う呼ばれ方されてみたかったんだ。変なお願いしちゃってほんとにごめんね。仲直りのしるしにクッキーどうぞ」
はい、と二枚入りクッキーの小さな袋を差し出す。
わたしのおすすめチョコチップクッキーだよ。
さあ、お食べ。
「…………」
なぜか五条くんはクッキーを見つめたまま動かない。