第1章 1ページ目 初日!
大きな手をぺちぺち叩くと五条くんはすぐに離してくれた。
ふぅー危なかった、乙女の危機だったじゅるり。
「で、ソレなに?」
「棒付きキャンディーだよ!硝子ちゃんにもらったの!」
いいでしょーうふふ!と笑えば五条くんは…
「ズルいこいつだけ!硝子俺にも!」
って騒いだけど、硝子ちゃんはよそ見して完全無視だ。
かっくいーしびれりゅ!
「おーれーにーもーくーれーよぉー!!」
机をばんばん叩く五条くん。うるしゃい。
しょうがないなぁ…ここはひとつ、わたしが大人になろうじゃないか。
「五条くん、五条くん」
「…ンだよ?」
ちゃらら~ん。とポケットから非常食のクッキーを取り出す。
「これ、なぁーんだ!」
「…クッキー?」
よしよし、五条くんの目はくぎづけだ。
「ふっふっふ、五条くんが『優しいちゃん、クッキーちょうだい』って言ったらこれあげる!」
「ふっざけんな、誰が言うか」
ふふん、これくらい想定範囲内だよ。
「じゃあ『ちゃんクッキーください』でもいいよ?」
「言うわけねーだろ、バァーカ」
ううん、まだまだ。
「じゃあね『ちゃん、クッキーくれ』でも…」
「言うか!いいからグダグダ言ってねーで早くよこせ」
うう、ん…ま、だ。
「あの、あのね?『ちゃん』ってだけでも」
「はっ、却下」
うぎゃんっ……な、なんだよぉう、ちゃんづけで呼ぶくらいいいじゃないか。
五条くんのすてきな声で『ちゃん』って呼んでほしかっただけなのに。
ほんのちょこっと調子にのっただけなのに…
そこまで全力で拒否しなくっても…
「う、うぐぅ…」
すんごく悲しくなってきた。
わたしの涙腺はほうかい寸前だ。