第11章 8ページ目 腹時計はとつぜんに。
「ぶふっはははははは!あはははははっ、はははっ、オマエのっ、ハラっ、ふっ、くっくっく…手で押さえてるから、痛いのかと思えばっ、ハハッ…まさか、あんなデカい腹の音っ、初めて聞いた…っぶは!!」
もう頭を机にくっつけて、苦しい~とか言いながら体をひくひく震わせている。
うぐ…たしかにすごい音だったけど!!
自分でもびっくりな鳴き声だったけどぉお!!
さすがに笑いすぎいっ!最初の気づかいは、優しさはどこにいったの!?
硝子ちゃんも夏油くんも遠慮してクスクス笑いにおさめてくれているのに、このっ、五条くんはぁああ!!!!
「うわあんっ、五条くんのばかぁああ!!」
すぐ手に触れた教科書をガシッとつかむと、そのまま五条くんにぶん投げる。
それは、笑いすぎて油断していたらしい五条くんの頭に見事にがつんとヒットした。
あ、いい音した。
その当たりのよさに少し狼狽えれば、五条くんは声もなく頭を押さえて悶えはじめた。
……うわぁ、痛そう…。
さすがにちょっとやりすぎたかなぁと思って、席を立ってそろーっと五条くんに近寄ってみる。
「あの、五条くん…大丈夫?」
声をかけた途端にむくっと体を起こした五条くんに、思いきりズレたサングラスの向こうからギロッと睨まれた。
うひいっ、美人が睨むと迫力あるうっ。
「大丈夫?じゃ、ねーよ!!」
「ご、ごめんね!まさか角が当たるなんて思わなくって…」
痛かったよね、ごめんね?
手を五条くんの頭へ伸ばして、ぶつけた箇所にそろーっと触れる。
あ、ちょっとふくれてる…かも?
ごめんねごめんね!何度も謝りながら、頭の上に掌をかざしたまま痛いの飛んでけ~と念じる。
すぐにうざったそうに止めろって言われるかと思ったけど、意外にも五条くんは手を払いのけることはなく、わたしの様子をじいっと眺めていた。
あまりに大人しいので、どうしたんだろうと気になってくる。