第11章 8ページ目 腹時計はとつぜんに。
ダメ押しにもういっかい、にぱっと笑みを浮かべておく。
もう必死だ、こんなに笑顔がひきつりそうになったのは初めてかもしれない。
汗がたらりとこめかみを伝って流れ落ちる。
お願いだから誤魔化されて五条くん!!
わたしの必死のお願いは……届いた。
そう、いまいち納得しきれていないような表情をしながらも五条くんは夜蛾先生の方へと向き直ってくれた。
やった……ありがとう、五条くんっ。
これでひと安心だ。
つい、ほうっと気がゆるんでしまう…と同時に、腕とお腹に入れていた力もゆるんだ。
――…瞬間、
” ぐうう~~ぐぅきゅうるるるるるるる~~ぎゅぅう~ ”
我慢に我慢を重ねていたお腹が鳴った。
それはもう打ち上げ花火のようにどかんと派手に盛大に。
しんと静かな教室の中、長く長く、鳴り響いた。
五条くんが、硝子ちゃんが、夏油くんが、ゆっくりと夜蛾先生が…みんなの視線がわたしに集まる。
五条くんの口がぱかんと開いた。
「……マジか」
ひぃいいんっ!!!!
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいいいいっっ。
なんでっ、なんで鳴っちゃうのぉおお!?
しかもあんな大きくて長いのっ、誤魔化そうにも誤魔化せないよっ!!
恥ずかしさに、カァアアーーッと全身が熱くなる。
「ぶふっ…」
硝子ちゃんがそっぽ向いて噴き出した。
「ン゛ふっ…」
夏油くんの方からも聞こえた。
「んん゛っふん…!」
夜蛾先生までっ…顔をそらして咳のフリしてるけどわかってますから!!
もちろん一番に気づいてくれた五条くんなんて、もう美人が台無しなくらいに笑っている。
机を平手でバンバン叩いて大笑いだ。
そこまで笑うっ?うぬう…!!