第11章 8ページ目 腹時計はとつぜんに。
授業中って、やたら眠くなったりするよね。
それと同じく。
どうしてお腹って授業中に鳴りそうになるんだろう?
さっきまで、休憩中はなんともなかったのにっ…ってさぁ。
ううん、もう、あああ、お腹さん待って。
もう少しだけ待って。
今ものすごく静かだからっ、響いちゃうからっ。
お腹にぐぐっと力を入れて、夜蛾先生の説明を聞いているフリをしながらこっそり両腕で押さえつける。
こういうときに限って珍しく隣の五条くんも静かだし、わたしは真ん中の席に座っている。
なんでだ!
みんなに聞こえちゃうじゃないか!
くうぅ、こんなことを考えている間にもお腹は今にも鳴きの声をあげそうに動いている。
お願い、お願いだから、もうちょっと眠っていてよう!
ねんねんころりよ~おころりよ~うんぐぐぐぐg鳴かないでぇえ…。
空いたよ空っぽだよ~と限界を訴えてくるお腹と格闘していると、わたしの妙な動きに気づいたのか五条くんがこちらをチラッと見てきた。
はわっ!なんでもない、なんでもないよ~。
そんな気持ちを込めて、お腹を抱えたままにへっと情けなく笑って返す。
五条くんは一度先生の方を見て、板書に一所懸命になっている姿を確認するとまたこちらに顔を戻した。
えええ、授業に集中しようよ五条くううん!!
…え、なに?
なにやら目線をわたしの顔より下に向けている……な、なに?まさか気づかれた…?
ごくりと唾を飲み込んでいると、すっと持ち上げられた五条くんの人差し指が揺れて、わたしが両腕で押さえているお腹を示す。
綺麗な顔のわりに大きく豪快に開く口が、ぱくぱくと何かを伝えようと動いた。
ん?
(は、ら、い、て、ぇ、の?)
ああ、そっかぁ。
お腹を押さえているから、お腹が痛いのかと思って聞いてくれたのかぁ。
うふふ、優しいなぁ。
でも今は、今だけは、いつもなら嬉しいはずのその気遣いがとてもツライよ五条くん!
(だ、い、じょ、う、ぶ!)
お腹にほとんどの力を割いているので、動くのはつらいけど。
あまりこちらを気にしてもらうとまずいから、ぐぐっとさらにお腹に力を入れて口パクで返事をした。