第10章 7ページ目 初めての任務(2)
目をぱちぱち瞬かせた夏油くんは、もう一度「え?」と戸惑ったような声をあげる。
「今作った、ゲロ袋ならぬゲロ結界です!」
「は…」
「奥行の深さとか伸縮性については、これから修練して改良していくとして。ココにいつでも安心して吐いていいから!夏油くん専用!」
ふんすっ。鼻息荒くそう言えば、夏油くんの細い目が限界まで開いたんじゃないかと思うくらい丸くなって。
少しの間の後、おもむろに俯いた夏油くんの口からふすっ…と空気のもれる音が聞こえた。
「ふっ…ふふっ…はは、あははははははっ…!!!!」
「……夏油、くん?」
今度はわたしがぽかんとする番だ。
天を仰いで大笑いしたかと思えば、今はお腹を抱えてクツクツと体を震わせている。
夏油くんて、けっこうよく笑うよねぇ…笑い上戸なの?
まぁでも声に出して笑うって健康にいいって聞くし、いいのかな。
「ぶっふう!ふっはは、おまっ…よりによってゲロ…っはは、ゲロ袋って…結界でっ…クックックッ…」
こっちにも笑ってる人いた。
振り向けば、いつの間にかこっちを見てゲラゲラ遠慮なく笑っている五条くん。
え、まって硝子ちゃんまで?あ、顔そらしたぁ!
「いや、笑ってすまない。まさか予想外すぎて」
「んー、べつに笑うくらいいいよ」
夏油くんの笑ってる顔すきだしね!そう笑えば、なぜか夏油くんの動きがぴたりと止まった。
あれ?なんか今、きゅん!って高い音聞こえたような…気のせい?
うかがうように夏油くんを見上げると、また時が動き出した夏油くんにぎゅうと抱きしめられた。
ぬ?
「えあっ、夏油くんっ?」
どうしたの?なにがあったの?
なんでハグされてるの?
もしかして、そんなにゲロ結界うれしかった??
「おい何やってんだよ!傑っ、こら離れろっ」
「嫌だ。邪魔するな、悟」
慌てた声を出して、五条くんが夏油くんをわたしから引きはがそうと夏油くんの太い腕をつかんできた。
でも、夏油くんは離す気はないようで…わたしの体に圧がくるほど、ぎゅむむうと抱きしめる腕に力を込める。
うぬ…くるしい…。