第10章 7ページ目 初めての任務(2)
「ねぇ、夏油くん」
「ん?なにかな」
「さっきのアレ…どうするの?」
アレ、と夏油くんのポケットを指差してみる。
夏油くんはああ、と言ってポケットをごそごそ漁るとさっきの黒い玉を取りだして見せた。
「これのこと?」
「そう!それっ」
どうするの?と首を傾げてもう一度問いかける。
「取り込むんだ」
「取り込む?」
さらに首の角度を深めれば、夏油くんは自分の術式について簡単に教えてくれた。
呪霊操術。取り込んだ呪霊を自由に操ることができる、らしい。
「でも、どうやって取り込むの?」
今は球体だけど、呪霊を出すときみたいに掌からしゅううって取り込めたりするのかな?
そんな風に予想していたわたしは、夏油くんの次の言葉に衝撃を受けた。
「呑み込む」
「…え」
「口からね、丸呑みするんだよ」
「ええっ?」
のむ?のみ込む?丸のみ!?
その、禍々しい汚い感じの黒い玉を吞み込んじゃうのっ?うええー……。
「……マズそう」
「クソまずいよ。とんでもなく、ね」
そう言って片頬を歪め、珍しく五条くんのように舌をう゛えーっと出して見せるから、それはもうよほど酷い味なんだろうと思った。
そんな、術式の為に…毎回とんでもなく不味い思いをしないといけないなんて。
ひい…考えただけでヤダ、苦しそう。
「…吐きそうになる?」
「…そうだね。吐けるものなら、吐きたいくらい」
少し苦しげに眉を寄せる姿に、胸がきゅうっと痛んだ。
そ、それは大変だ。
なにか、出来ること…わたしに出来ることはっ。
「あの、夏油くん」
「ん?」
「それは、取り込まないといけないんだろうけど…どうしても吐きたかったら、吐いていいからね!」
「え?」
わたしは流れる呪力を集めて術式を使い、両手を合わせてから結界ごと広げると夏油くんに向けて差し出した。