第9章 7ページ目 初めての任務(1)
にへにへ笑いながら、いまだに頬っぺたをぷにぷに突いてくる指をぎゅっと捕まえる
いつまでも突かないでほしい。
そんな願いを込めて握ったままでいれば、五条くんの片眉がわずかに歪んで。
「…なんだよ?」
「いや、『なんだよ』はこっちの台詞っていうか。頬っぺたつつかないで五条くん」
「は?なんで?」
ええ、なんでそんな不思議そうに首を傾げるのかな?
かわいい仕草…はおいといて、わたしのほうが不思議だよ。
「なんでって…ちょっと痛い、から?」
「じゃあ、突かなければいい?」
「え、まぁ…うん」
どういう会話なんだろうこれ。と思っていたら、掴んでいた指を外されて、するりと大きな掌がわたしの掌と合わさる。
ほえ?
わたしより軽く二回り以上も大きい手に包み込まれるように握られ、そのまま座席にすとんと下ろされる。
え、なんだろう。
これ、このままなの?
わけがわからなくて左隣を見上げたら、五条くんもこちらをじっと見ていたようでサングラスと目が合った。
「…なに」
「っ…あの、えと、これ…」
うまく言葉が出てこなくて、ただ握られた手と五条くんの顔を交互に見やる。
「つつく以外ならいいんだろ」
「それは、まぁ、そうなんだけど」
手を繋ぐ意味とは…?
ちょっと恥ずかしいし。
そう思って、なんとなく繋がったままの手を軽く上下に振ってみる。
うん、離れないなぁ。
どうしようと傾きかけた頭に、ぽすっと柔らかな手がのってそちらを向く。
ふわりと漂ってくる硝子ちゃんのいい匂いと、どことなくスモーキーな香り。
つい癖でスン…と鼻を動かして嗅いでしまう。
煙は得意じゃないけど、この匂いは嫌いじゃないなぁ。
「そのままにしてあげな。手を繋ぎたい気分なんだろ」
「手をつなぎたい気分…?」
「そういう時もあるんだよ」
「んーー…そうなのかぁ」
そういう気分なのか、そっかぁ。
さっき会話にいれろって言ってきたくらいだし、ほんとに寂しかったのかもしれない。