第8章 6ページ目 しゃぼん玉とばせ。
「あ、の、五条くん?ほんとに間接キス、で、困ってたの?」
「いや、だって、お前はいいのかよ…?花見のときは嫌がってたろ」
「あっははは、五条おまっ…女子小学生かよっ、乙女かっ…ひぃっ、腹痛いっ…!!」
「硝子っ笑うなっ」
「…ふっ…く…っくく…間接キス恥ずかしっ、げほえほっ…しぬっ…!!」
「傑ぅっ!!」
あーあぁ…大変だぁ…。
笑いすぎて机と仲良くくっついて、硝子ちゃんはたまに体をぴくぴく震わせているし。
すでに笑い死にしそうな夏油くんは、座っている椅子を真っ赤になって怒る五条くんによってガツガツ蹴られている。
これがカオスというものか。
おっと、しみじみしてる場合じゃない。
「五条くん、五条くん」
怒れる五条くんの傍に近づいて、上着の裾をちょいと軽く引っ張ってみる。
「なんだよ!」
勢いにちょっとびっくりするけど、気にしないフリ。
「あのね、しゃぼん玉しよ?」
「は?」
「わたし、五条くんと一緒にしたいなぁ」
せっかく、一度はやりたいと思ってくれたんだもん。
やっぱり一緒に楽しみたいよ。
ねぇ、五条くん?
首が痛くなるのを我慢して、じぃいっと五条くんを見上げ続ける。
「…どうしても?」
「どうしてもっ!」
お願いお願い。と気持ちをこめて見つめれば、はぁ…と大げさな息を吐き出して、五条くんが後ろ頭をかいた。
じっと黒いサングラスが見下ろして、意外と太い指先がわたしの額をつんとつつく。
「仕方ねぇな…貸せ」
「え?」
「しゃぼん玉だよ、やるんだろ?」
「…うん!」
えへへ、やったぁ!
うきうき気分でしゃぼん玉セットを渡せば、ちょっとだけこっちを見たけど。
わたしがこっくり頷けば、今度はストローを咥えてふうっとしゃぼん玉を吹き出した。
ふわわん。ぽわん。ぽぽぽぽん。
大きいの。小さいの。ものすごく小さいのたくさん。
どれも風にのって、すいーっと外へ空へ飛んでいく。