第8章 6ページ目 しゃぼん玉とばせ。
連続して虹色をまとった透明の球体がストローの先から飛び出て、教室の中をふわふわと浮かんでは開け放った窓の向こう側から空へと飛んでいく。
うへへ、た~のし~~い!!
「ふっふっふ、きれ~~い!ね、けっこう上手く出来てるでしょ!」
しゃぼん玉がきれいで、なんだかとっても楽しくて、何回も吹き続ける。
五条くんも夏油くんも硝子ちゃんもみんな、空を自由気ままに飛び回るしゃぼん玉たちをぼんやり見上げていた。
「なぁ、俺にも貸して?」
「お、いいよー!はい!」
どうやら急にやる気になったらしい五条くんに、ストローと紙コップを手渡す。
えへへ、うれしいなぁ。
ひとりでやるのも楽しいけど、やっぱり誰かと一緒の方がより楽しいよねー。
と思っていたら、ストローを口元近くまで持っていった五条くんの動きがふと止まった。
ん?どうかした?
「五条くん?どうしたの?」
「あ、いや…」
なんともハッキリしない言葉だけで、五条くんは困ったように眉を歪める。
ストローをじっと見て、それからチラ…とわたしを見てまたすぐに逸らす。
んんん?
どんどん首を傾げていくと、違う方からの声が入った。
「もしかして五条…間接キスとか、意識してる?」
硝子ちゃん?そんなまさかぁ。
硝子ちゃんは寝てたから知らないかもしれないけど、お花見のときに上書きキスしてやろうか?なんて言う人だよ?
そんな間接的なキスごときで、五条くんがストローくわえるの躊躇うわけがないじゃない。
「あはは、まさかだよ硝子ちゃん。ねぇ、五条く、ん…?」
「……」
五条くんを見ると、綺麗な陶器のような白い肌が、頬のあたりを中心にじわじわ赤みを帯びてきていて。
「え?」
「は?」
「ぶふっ」
えええ、どうしちゃったの五条くん!
顔赤いよっ、恥ずかしいの?ってなにがぁ!?