第6章 4ページ目 お花見わっしょい(3)
「硝子ちゃん、ちょっとごめんね」
「んー…?」
手を硝子ちゃんの顔に伸ばして、口元にかかっていた髪をちょちょっと横へ流す。
うわあ、サラサラぁ~~触り心地いい~~。
「ふふっ、硝子ちゃんの髪すごくきれい」
「……」
「硝子ちゃん?…大丈夫?」
黙ったままぼんやり見てくる硝子ちゃんに、少し首を傾げる。
まだ寝惚けてるのかなぁ?
おsa…じゃない、お水!いっぱい飲んだみたいだしねぇ。
よしよし…と頭を撫でてみても、硝子ちゃんはじっとされるがままだ。
うふふ、いつもと逆だなぁ~なんだか新鮮!
「おいそこの女子二人、イチャイチャしてないで寮に戻る準備しろよ。置いてくぞ」
五条くんの声にそちらを見れば、すでに夏油くんが大まかに荷物をまとめて待っている。
あとは硝子ちゃん周りの空き缶空き瓶、そしてレジャーシートくらいだ。
うわ、片付けてくれてたんだ!ごめんねぇえ、ありがとう!!
「ごめん、すぐにこっちも片付けるね…ん?」
とんとん、肩を軽く叩かれて硝子ちゃんを振り返る。
「なぁに、んむ」
目の前が薄暗い。
ごく間近になにかが見えるけど、近すぎて焦点が合わない。
そして口に当たっている、柔らかいなにか。
………?
あまりのわからなさに、わたしの中で時が止まった。
「は?」
「硝子?」
五条くんの気の抜けた声と、夏油くんの困惑しているような声。
それと同時くらいに、何かはちゅっと小さな音を立てて口から離れていく。
徐々に視界が明るくなって、すぐ目の前に硝子ちゃんの顔が見えた。
えっと…今、これは、なにが……。
わけがわからないまま確認するように、なにかが触れていた唇にそっと手を当ててみる。
今の、は……硝子ちゃんが目の前で……やわらかいのが、口に……………へ?