第6章 4ページ目 お花見わっしょい(3)
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「わたし、ちょっと硝子ちゃんと夏油くん見てくる!」
「あ、おいっ………なんなんだ、のやつ……まぁ、食うけど」
用意した広すぎるレジャーシートは、端から端まで少し離れている。
その端で寝転がっている二人の方へは行ってしまった。
小さいわりに素早く移動するその背中を目で追って、それから手元のチョコレートへ視線を落とす。
桜、か…。
五条はさきほどのの様子を思い出す。
強風に吹雪くように舞う桜の花弁に魅入って惚ける姿。
ここにいるのに、心はあらず。
ぞっとした。
あいつが…隠されるかと思った…。
桜花の形をしたチョコレートをぽいっと口に放り入れて、がりっと嚙み砕く。
口の中にほんのり桜の風味が広がり鼻を抜ける。
でもやっぱり一つじゃ物足りなくて、さらに五個ほど一気に頬張る。
がぶっ、ぼりぼりぼり。
「…んなわけあるか、バカらしい」
俺の前で。
有り得てたまるか。絶対に。
そんな思いを込めるように、乱暴に噛み砕いたそれをごくりと飲み込んだ。