第6章 4ページ目 お花見わっしょい(3)
「でも、夜桜。きれいだよねぇー」
「んー、まぁな」
頬をさすりながら桜を仰ぎ見る。
今度は五条くんも頷いて、空に広がる桜の花を一緒に眺めた。
チラ…と横の五条くんを見ると、白い髪がほわほわ光って見えて。
桜とはまた違ったきれいさだなぁ、なんてちょっとだけ見惚れた。
「ん、なんだよ?」
「ううん、なんでもないよ」
首をふるりと振って笑う。
なんだそりゃ。五条くんも笑った。
ああ、楽しいなぁ。
「そういえば、硝子ちゃんと夏油くんは?」
途中からずっと二人で離れたところにいるし。
ずいぶんと声を聞いていない気がする。
「あっちで転がってる」
「えっ」
ころがってる?
五条くんの指さす方を振り向けば、たしかに二人はそこにいた。
そして、硝子ちゃんも夏油くんも丸まって横になっている。
「えっ?」
どういうこと?
すぐには意味がわからなくて、もう一度五条くんを見る。
「飲み過ぎたんだろ、きっと」
「なにをっ?」
「なにって、さ…」
「わぁーあーあーっ、わかった!わからないけどわかったから、その言葉は言っちゃダメ!」
未成年はだめ、ぜったい!
だからわたしは言わない、知らない、これは気のせいです。
「五条くん、二人は桜に酔っちゃったんだよ」
「なに言ってんだお前」
まぁまぁ、ここはわたしに任せて!
五条くんはチョコでも食べなよ、桜チョコだよ。
コンビニで見つけて、さり気なく買っておいた桜のチョコレート。
特別だよ!と言いながら、五条くんにグイと押しつければ、いきなりで戸惑いながらも受け取ってくれる。
拒否しようと思えば出来るのにしないんだよね…と、その温かさに顔がほころんだ。