第6章 4ページ目 お花見わっしょい(3)
「なにから食べようかなー?」
「あ、この唐揚げウマッ」
「えっ、本当?わたしも食べるーっ」
「飲む前に、私も少し食べるか」
「硝子、焼き鳥あるよ」
「お、サンキュ。さすが夏油、わかってんね」
「私も飲むつもりだからね」
「ちょ、ちょちょっとお二人とも?飲むってなにを…?」
「……お茶?かな」
「……お水?だよ」
「なんで疑問形なのっ?」
「もぐもぐもぐもぐ……」
「あっ、五条くん!スイーツは最後だってばぁ!!」
「むぐ…これは俺のだから、いいんだよ」
「そっちの三色団子はダメだよ?って、あああ!」
「っせぇーなぁ。もうお前も食えよ、ほら」
「もがっ…ぐ…もぐ、もぐもぐもぐ」
「ふふっ…、ハムスターみたいだな。」
「頬袋があるんじゃないか?どれ…」
「ふぐ?ふーむーう゛ぅーーっ(やーめーてぇーーっ)!!」
みんなで一緒に、それぞれバラバラに。
お弁当を食べたり、ジュースを飲んだり、お茶?やお水?を飲んだり、こぼして笑って、酔っぱらった風の約二名が面倒くさく絡んだり絡まれたり、人のもの取って笑って、取られて泣いてまた貰って笑って。
どうでもいいことで笑って、食べて飲んで、また笑う。
ひとしきりお弁当の中身が空になったところで、ようやく今日の主役を見上げた。
高専の敷地内で、ひときわ大きな一本の桜の木。
懐中電灯の光に照らされた場所だけ、ぼんやり明るく浮かび上がっている。
昼間は薄ピンク色だった花びらが、暗闇の背景と光の眩しさで真っ白に見えた。
風が吹くたびに、はらりひらり…舞うように落ちていく様に目が惹かれる。
きれいだなぁ…でも、不思議とせつない気持ちも浮かんでくるような…。
ちょっと強い風が吹いて、ぶわぁっと白が吹雪いて視界を埋めつくす。
どこまでも広がるしろ、白、白。
「わあぁ………きれい……」
幻想的な光景に目を奪われた。
目の前いっぱいの白を見つめる。
ほぅーー…っと、ただただ白だけを見上げて、目で追いかける。
なんて美しいんだろう。
自然と笑みが浮かんでくる。