第6章 4ページ目 お花見わっしょい(3)
陽はさらに傾いて。
夕焼け赤オレンジから、夕闇のピンク薄紫に濃紺へのグラデーション。
空はすっかり夜へと準備をはじめている。
もう少ししたら、月と星の光が強くなってほわぁっと周囲の空を照らし出しそうだ。
うーん、まるでトロピカルジュースのような色合い。
「…おいしそう」
「え?ああ、お弁当のことかい?」
つい声に出てしまったらしい、隣で飲み物を紙コップにそそいでいた夏油くんに聞き返された。
うーん、お弁当はもちろんおいしそうなんだけどね。
「ううん、お弁当じゃなくて、空」
「え?」
「おいしそうな色してるなぁ~って」
「…、空は食べられないよ。甘くもない」
そ、そんな真顔で言わなくても…。
「わかってるよう」
「そうかい?なら、いいんだけど」
はい、と渡された飲み物を反射的に受け取る。
「こっちの方が美味しいよ」
「…夏油くん」
絶対に信用してないよね?
くうっ…そんな素敵に笑いかけても、誤魔化されないんだから。
夏油くん、とっても失礼っ。
ぷくーっと頬を膨らませて、横目で夏油くんの笑顔を見ながらジュースをちびっと飲む。
…あ、おいしい。
「こら、一人で先に飲んでんじゃねーよ」
「あいた」
五条くんに頭をぺしんと叩かれた。
けど、手加減してくれたのか音ほど痛くはない。
えへへ、つい飲んじゃったよ。
まずはみんなで乾杯だよね!
「ごめんね五条くん、乾杯しよっか!」
「ったく…傑っ、俺にもジュース!」
「これでいいか?」
「ああ、さんきゅ」
五条くんの手元には、ジュース入りの紙コップ。
わたしはさっきのうっかり飲みかけジュース。
夏油くんはお茶…お茶?っぽいなにか。
硝子ちゃんは……それ、お水?お水…だよ、ね?
なんかでっかいお醤油みたいな一升瓶がいつの間にか置いてあるんだけど。
…うん、あれはお水。お水なんだよ、きっと!!
まぁそれはさておき、いざ。
「みなさん、お花見です!めいっぱい楽しみましょう!ってことで、乾杯しようっ」
せぇーのっ。
「「「「かんぱーい!!!!」」」」
お花見開始ぃーーーーっ!!
各々紙コップを空にかかげて叫ぶ。
うふふふ、楽しーーいっ。