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夜行観覧車

第3章 地獄の沙汰も最強次第。【高専五条成代 / 夏油】



 最強の俺が贈る、呪いの言葉だ。
 
 それだけでもう、ないだろ。
 地獄まで 一緒にどうぞ。
 
 何百回もそう何千回も。
 おまえの正常な脳味噌を絆している。
 


 「傑はコレだろ」

 「星来はこれだろう?」
 


 お互いに、お互いの持っていた缶ジュースを交換し合った。
 甘党の俺からしたら、こいつがコーヒーを選ぶ事だけが唯一、
傑を否定したくなる事実だった。

 不味そう。ココアの冷たさと、表面に映った自分の顔に無視を
しながらそう思った。

 「…地獄でも、それ飲むの」

 不意に、気になる。
 好きな物は、やっぱり地獄になんか落ちても好きで居られるんだろうか。
 
 傑はなんか、虚を突かれたような顔を少ししてから、視線を
逸らした。
 
 

 やがて微笑んでいる。

 「あぁ。きっとね」
 
 
 「……………ふーん」

 俺は、なにを聞きたかったんだろう。









 「そういう星来はどうなんだい?ソレ、」

 「ばーか飲むに決まってんだろ。地獄如きで、なんでココア諦
 めなきゃいけねーんだよ」


 「そうか、筋金入りだね」












 傑が言うなら、この世界を終わらせることも厭わない。

 俺は俺の都合で、世界に向けてぶっぱしたりはしないけど、傑が言うことなら別に、やってもいい。



 俺はただ黙って、無責任に地獄へ行くから。


 「…けど、忘れてねぇよなぁ?」

 「?」






 「地獄へ行くときにゃ、オマエも道連れだぜ」

 地獄への道は善意で舗装されている、だとか。はぁ?





 
















 善意だろうが悪意だろうが、結局俺達にとっちゃ意味のない


 愚意なんだよ。



 「………勿論、忘れていないさ。
 今までの星来の呪詛の中でも、本当に意味のない事に
 思えたからね」

 「…ハハ、うっせぇよ」




 地獄の沙汰も、

 「………そう言えば、許嫁の話。
 地獄でだったら、私が星来を連れて行けるんだろう?」

 「ハハ、あぁ。そりゃ良いね、優良物件だ。デスウエディング
 も悪くねーかもなぁ」









 地獄で謝れるかどうかも、オマエ次第って事だな。

 傑が居れば、まだ最強も、悪くない。


 
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