第5章 薬。【五条成代 / 家入】
「あれ、夏油は」
「、間に、合わなかったっ…!、」
星来は、泣いていた。
「…そっか」
ねえ。
『どうした、硝子?』
“夏油はさ、離反するつもりってこと? 高専に、”
『あぁ、そういう事になるね』
“それってさ、”
“残された五条はどうでもいいとか、そういう事?”
“だとしたら、ぶっ殺すよ”
“夏油”
「傑、っ、ぅ゛ッ……!!、ッ、゛」
煙草は、苦い薬みたいな味がした。
夢ならば、どれほど。
なんて、
なににも関わらなかったくせに、ムシがいいかな。
ねえ、星来、
お願いだから顔、上げてよ。
「す、ぅ゛ぐッ、っぅ゛……ッ!、!」
「……ごめんね」
あんたの初恋、私が忘れないでいるから。
「……、ん、」
「よぉ。疲れた顔しやがって」
「……硝子じゃんか」
何してんの、と五条は呟く。
煙草吸ってるけど。
そう答えると、五条は特に顔色を変える事もせずに、「…禁煙」と答えた。
「……やめたの」
「ちょっとね、思い出した事があって」
「……?」
ふう、と息を吐く。
なんて顔してんの、馬鹿。
「サングラス、久々に見た。もう付けないのかと思ったよ」
「あぁ、これは別に。深い意味ないよ」
「へぇ」
私と話す時、コイツはいつもそうだ。
きっと、私が見えていない。
その奥の、もっと、
……だってそんな話し方、してなかったじゃん。