第1章 実習先、間違えました!!
「あ、あの………、えっと泊めてくれた、お礼、をね?しよーかな、って」
な、何人間如きにビビってんのよ、あたし。
相手は所詮人間よ。
こっちはもうずっと、悪魔やってんだから!!
す、と。
瞳を細く、上目遣いに彼を見た。
そのまま顔だけ起こして、彼へと近付く。
「お礼がしたいの」
実習中だってこれで何人も落としてきたんだから。
あたしに敵う男なんていないのよ。
「………お礼、ね」
唇が触れるまであと数ミリ。
低く、蔑むような声に動きが止まる。
「据え膳食わぬはなんとやらってやつ?」
「え」
瞳が弧を描いて口角が、あがる。
挑戦的にあたしを射抜く目が、真上からあたしを見下ろした。
両手が頭の上で纏められて。
唇が、強引に重なった。
「ん………っ?」
な、何。
何、これ。
「何今さら暴れてんの。誘ってきたのそっちな」
ばさり、と。
Tシャツを脱いで。
彼の程よく筋肉のついた逞しい身体が、晒された。
思わずゴクリと、喉が鳴る。
やだ。
すごく美味しそう、この人。
「暴れたと思えば積極的だし、どっちなのあんた」
気付けば。
右の掌を彼の胸へと伸ばしているところで。
視線が、あたしの指先へと向いている。
ああもう。
主導権とかどーでもいい。
早く喰べたい。
お腹空いたし。
早く。
早くちょーだい。
「………さぁ?」
口元へと人差し指を置いて。
にこりと笑う。
そのまま目を閉じて顔を近づければ。
ぐい、って。
力強い指があたしの顎を、捉えた。
「さっきから怪しすぎなんだよな」
「ぃ………っ、た」
「なんの罰ゲームかしんないけどさ、ずいぶんとお粗末すぎねぇ?」
「罰、ゲームじゃな………っ」
強引に顔を上げられて、喉に指先が食い込む。
「じゃ何」
くる、し…………。
この人、か弱い女の子相手に全然容赦してくれない。
「適当にダサいの引っ掛けてやればいいとか思った?」
「思ってない…………」
なんか勘違いしてる。
違うのに。
試験のためなだけなのに。
「だから、じゃぁなんのゲームなのこれ」
これほんと、くるし………っ
これじゃ『精』も『死』ももらう前にこっちが死んじゃう。
「〜〜〜っ、はな、して………っ、よ!!」