第1章 実習先、間違えました!!
までは、良かったんだけど。
ドン、て。
横から出てきたモサイボサボサ頭のメガネくん、が、ぶつかって。
「すみません、大丈夫ですか?」
なんて、起きるのに手を貸してくれちゃったりするから。
気付いちゃった。
辺り一面たちこめる、甘い匂いに。
「いた!!」
「え」
『一目でわかる』。
うん。
わかった。
ほんとにわかっちゃった。
「見つけた」
差し出してくれた手をとって、そのまま彼に抱きついた。
あまりに嬉しくて。
達成感、てゆーの?
いやもうほんと、嬉しくて。
まわりのことなんか、見えてなかったんだ。
「何あんた」
「あ」
そうだ。
チャラいおにーさん。
忘れてた。
「ごめんなさい、やっぱり行くのやめます」
深々と頭を下げて、謝罪。
誤ったんだから、許してよね。
「あ?ふざけてんのあんた」
「だから、ごめんなさいって………、わぁ!?」
目の前で怒りを露わにするおにーさんにまた、頭を下げれば。
腕がぐん!て引かれて。
「え?え、何、なんで?」
「いいから、走って」
そのまま腕を引かれながら全速疾走すること数分。
やっと広い道路に出たところで彼は足を止めた。
「ここまでくれば、大丈夫かな」
大丈夫じゃない、っての。
空腹な上全速疾走て。
死ぬ。
今度からは気をつけて、なんて言って立ち去ろうとする彼の腕に全体重をかけて腕を絡めて。
「え?」
「行かないで。行くとこない。もうずっと、なんにも食べてないの」
こうなりゃもう、泣き落とし。
せっかく見つけたんだ。
絶対逃がさない。
「お願い。今日だけでいいの。泊めてください」
とりあえず事に運べばこっちのもん。
メロメロにして、骨の髄まで食べ尽くしてあげる。