第2章 ターゲットからの提案
どーなってんだ。
なんでこいつ、平気でいられんの。
「…………帰ります」
「ん?ああ、そう」
「はい。もう会うことはないと思いますが、お世話になりました」
「は?」
ああほんと。
最悪。
落第どころか消されるかもなぁ。
なんたって人なんかに正体バラして、挙句精だけ喰って『死』もらえてないし。
はぁ。
ため息ひとつ。
ゆっくりと立ち上がり、ふらふらとベランダへと足を伸ばす。
窓へと手をかけた、ところで。
バチバチバチっっ
いきなり流れて来た電流に、右手が焼けこげた。
「…………ぇ」
ジュゥウ…………って、言ってるよこの右手。
めちゃくちゃ焼かれてんじゃん。
何これ。
どーなってんの。
「…………おまえバカだろ」
「はい?」
「帰るっつったら普通玄関じゃん?窓から帰るやついるかよ普通」
「…………意味が、わかんないんだけど。」
そしてこの焼けこげた右手どーすんの。
「いや、つーかまぁ、どっちでも変わんねーか。バカっぽいしおまえ」
「何それどーいう…………」
反論が終わる前に。
顎が持ち上げられて、後ろから、とーるが覆い被さるように唇を、奪う。
「んぅ!?」
しかも。
舌、思いっきり絡めやがった!!
押しのけたいのに。
右手ぐズキンズキン痛くて、熱くて。
動かせない。
…………あれ。
痛く、ない。
唇が離されて。
右手へと視線を向ければそこは。
見事なくらい火傷の痕すら、残ってない。
「こーゆーこと」
驚きを隠せずに勢いよく振り返れば。
勝ち誇ったようにとーるの両目が、その面積を狭めた。