第2章 ターゲットからの提案
「は?」
ぇ。
待って。
何?
え?
え。
今こいつ、傷、治した?
なんで?
え。
人間てこんなこともできんの。
つーか習ってないし。
いやいやいや、人間すごいんだけど。
「…………すごいね、これ」
感心したように呟けば。
とーるの笑い声が、静かに漏れる。
「…………っくく、やっぱおまえ、いいな」
「?」
「いや別に。なんでもない」
習ってない。
こんなの絶対習ってない。
待ってこれ、大発見。
最悪落第は免れなくても、消滅は免れそうじゃない?
試験はまた挑戦すれば良い。
せめて消滅だけ免れれば。
うん。
よし。
もっともっと、とーるで観察させてもらお。
人間についてまた新たな発見、あるかもしんないし。
「…………ん?」
ガッツポーズひとつ、とーるへと視線を向ければ。
ドクん…!!
心臓が。
おっきく跳ねた。
「あ、あれ?」
「…………顔赤くね?どーした?」
「…………んっ」
両手で、とーるが頬に触れた途端。
なんだろ。
触られたところが、熱くなる。
「朝からやらしーこえ。昨日散々したくせにたりねーの」
おかしそうに笑いながら。
だけど明らかに艶の増した声でそう、囁いて。
とーるの唇が首の後ろを舐めた。