第2章 ターゲットからの提案
「勝手に出て来ちゃうの。仕方ないでしょ」
「飯は?いる?」
「…………いらない」
話がどんどんいろんな方向から飛んでくるな、おい。
だいたい。
人間のご飯なんて別に…………。
「…………いい匂い」
「食う?」
「…………」
和んでどーするあたし。
何仲良くテーブル囲んでんのよ、あたし。
さっさと殺して帰るんでしょ。
しっかりしろ、リッカ。
「…………ねぇ」
「透」
「?」
「ねぇ、じゃねーよ。透」
「…………とーる」
「おう」
「ほんとになんで、動けるの?」
「ん?」
「あたし、悪魔なの。尻尾も使い魔も本物!!昨日あんたの精、たくさん喰った自覚ある。普通なら姿形すら残らないくらい、あたし喰いまくった自覚ある。なんでそんなに元気なの?」
「さぁ?」
「さぁって。なんか驚いたとか、ないの?」
「だから驚いたって言った」
「見えない」
「ああうん、よく言われる」
「…………」
悪魔だよ?
あたし。
魔力だって使える。
そうだ魔力。
ミンクが戻ったなら魔力だって。
黙々と食事を口へと運ぶとーるの顔をじ、と見つめていれば。
やっと視線に気付いたとーるが、あたしを見た。
…………今だ。
じ、ととーるの両目と視線を合わせて、逸らさない。
いわゆるあたしたち淫魔だけが使える魔力。
視線を合わせた相手を一瞬で虜にする。
どんな悪魔だって、それこそ鬼ですら虜にしたんだから。
ただの人間なんか、いちころよ。
「…………あ、あれ?」
ただの、人間なんか…………。
「何?」
「…………え、と。何か、感じませんか」
「あんたの熱い視線は感じた」
「じゃ、なくて」
「何?ああ、おかわり?」
「そんなのはどーでも良くて!!」
「何」
「…………」
おかしい。
絶対。
おかしい。