第9章 視察
「おはようございます」
(………ん?)
広間にはいつも通りにみんなが集まっているけど、装いがいつもと違う…?
まるで直ぐに出かけるような…そんな出立ちだ。
「伽耶来たか。座れ」
「はい」
どうやら、昨日のことを引きずってる場合ではないらしい。
広間にいる皆の表情にも笑いがない。
信長様に言われるままに、私は自分の場所に座った。
「では会議を始める。秀吉」
「はっ!」
秀吉さんが一通の文を開いてその内容を読み上げた。
手紙の文面が難しくて今一つ内容の理解ができないでいると、信長様が口を開いた。
「文にあった通り、先日の大雨で被害を受けた村の領主から昨夜救援要請があった。これより人員と物資を確保し現地へと向かう。詳しい状況は行ってみなければ分からんが、かなり深刻なことは間違いない」
(水害!?水害なんて…私の時代でも大変なのに、この時代の被害は計り知れないんじゃ…)
信長様の言葉にニュースで見る映像が思い出され、背筋が寒くなった。
「三成、貴様は物資の調達に取り掛かれ」
「はっ!」
「場所はそう遠くない。人手は多い方がいいだろう。皆で向かい俺が直接指揮を取る。食事を迅速に済ませ各々準備に取り掛かれっ」
「はっ!」
武将達は軽く頭を下げた後食事を始め、私も急いでお箸を手に取った。
「伽耶」
私の名前が呼ばれた。
「はい?」
「貴様も来いと言いたい所だが貴様はここに残れ、だが俺が戻るまで城の外に出ることは許さん」
「?」
なぜ外出禁止とされるのかが分からないけど、私の気持ちは今はそっちにはない。
「私も連れてって下さい。現地で何かお手伝いをしたいです」
現代にいる時はニュースを見て募金をするくらいで何も行動をしたことはない。でも、ここには今目の前に救助に行こうとする人達がいる。そんな人たちがいて、困ってる人が近くの土地にいるというのに、お城でのんびり帰りを待つことはできない。