第8章 晩酌②
「うーーん完敗です。信長様、仕掛けを教えて下さい」
札をぎゅっと握りしめて伽耶は願い出る。
「簡単には教えられん。次回までに考えて来い。それでも分からなければ教えてやる」
「え〜、また晩酌に付き合うんですか?」
「答えを知りたいのならそう言うことになるな」
「んーー、分かりました。次の晩酌までに頑張って考えます。違っていた時は、ちゃんと答えを教えて下さいね」
「約束する」
(答えは、多分出すことはできまい。だがこれでまた奴をここに呼び出せる)
奴との晩酌がまだ今後も続くのだと思うと、やはり愉快な気持ちになった。
「あの…そう言えばこの懐剣、ありがとうございました」
居心地悪そうに懐剣に触れながら、伽耶は礼を言った。
「池にでも投げ捨てるかと思ったが、ちゃんとしておるようだな」
「っ、そうしようとは思いましたが、してないとまた変なことされそうですから…」
「ほぅ、学習はしておるようだな」
(していなければ、それを理由に仕置きできたものを…)
伽耶に行動を先読みされ、残念に思う反面愉しくもあった。
「でも持ち慣れていないので違和感はあります。お城の中にいる時は安全ですし、携帯しなくても良いですか?」
胸元から取り出し伽耶はそれを手に持った。
伽耶が抵抗なく持てるように小柄で華やかなものを選んだつもりであったが…、
「やはり貴様には似合わんな」
「え?」
「いや何でもない。良いだろう。俺と共にいる時であれば携帯せずとも良い」
(俺の近くにいて貴様が命を落とすことなど有り得んからな)
「信長様と一緒の時なんて、ほとんどないじゃないですか…」
「ならば俺の近くにいるようにするんだな」
「そっちの方が危険な気がします」
眉を寄せて困った顔をする伽耶を、もっと困らせてやりたくなった。
ゴロン。
俺は奴の膝の上に頭を乗せ寝転がった。