第8章 晩酌②
「………へっ!?」
間抜けな声を出して伽耶は固まった。
「な、何をして?」
「何だ、膝枕を知らんのか?」
「知ってますっ!私が聞いてるのはどうして私があなたに膝枕をしているのかって事ですっ!」
「枕を探しておったらそこに貴様の膝があった。それだけだ」
(そして想像以上に快適な枕だ)
「枕をお探しなら今お出ししますからどうぞそちらに…!」
「気遣いは無用だ。この枕で良い」
(奴が何を言おうが、聞いてやる気はない)
「なっ、何もしないって言ったじゃないですかっ!」
「それは前回の晩酌の事であろう?今回は何もせんとは言ってはおらん」
「っ……」
戸惑い言葉を無くし固まる伽耶の髪を一房取って口付ければ、奴はますます困った顔をした。
(堪らなく愉快だな)
予想通りの反応をする伽耶に、さらに先の予想をする。
(このまま奴の綺麗な髪に顔を埋め、奴の耳から順に責めてやれば昼間聞いた甘い声を奴は惜しげもなく漏らすのだろうか?)
昼間に噛み付いた奴の耳の感触と甘い声が甦り、その先を知りたい欲に駆られる。
(このまま力づくで奴を奪うのは簡単だ。だがそれをすれば伽耶は二度とこのような顔を俺に見せなくなるだろう…)
湧き上がる欲を抑え、俺は伽耶に話しかける。
「おい、次までにもっと肉を付けておけ、ゴツゴツして頭が痛い」
「はぁっ!?」
「それ以外は合格だ。貴様は中々に快適な枕だ」
「だから、それがセクハラですからっ!もうっ、離れて下さいっ!」
人であれ、物であれ、俺の手に入らぬものなど今までなかった。それに、戦も狩りも賭けも得意だ。負けた事などはない。
貴様が自ら俺のものになりたいと必ず言わせてやるが、今宵はまだこの心地いい枕だけで我慢してやる。
今宵はな……