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【イケメン戦国】オレ様とカエル

第8章 晩酌②



「そうでしたか」

秀吉は少し間を置いて再び口を開く。

「信長様は、伽耶をどうするおつもりですか?」

「どう…とは?」

「あいつを、元の時代に帰してやるつもりですか?それとも、このままお側に置くつもりですか…?」


秀吉の一歩踏み込んだ質問に俺の思考は停止する。


「……そうか」

「え?」

「帰る…そうであったな」

そう言えば奴は五百年先の未来から来て、あとふた月もすれば帰るのだと言うことを忘れていた。

伽耶との事は、単純に”興が乗った”。ただそれだけだったはずだが…

伽耶といると、とうに捨てたはずの感情が呼び戻され掻き乱されると同時に心地よさも広がり、もっと奴を知りたいと、様々な表情を引き出したいと、伽耶への欲は膨らんでいた。

「伽耶をどうしたいのか俺にも分からん……が、賭けに勝てば奴はここにとどまる。ならば勝てば良いだけのこと。これほどに飽きのこない女には初めて会ったからな」


次は何をしでかすか、何を言い出すのか、どんな表情を見せるのか?
まだ俺は奴の全てを知り尽くしておらん。

それまでは…

「奴を手放す気はない」

「そうですか。それを聞いて安心しました。では俺はこれで…」

秀吉の満足のいく答えだったのか…安心した顔で奴は部屋から出て行った。


視線は再び誰にも相手にされぬ酒の膳へと向く。

昼間に会った時、伽耶は俺を睨んでいた。
晩酌に付き合いたくないと、遠目に見ても分かるほどに眉を吊り上げて睨んでいた。

蘭丸いわく、遊女といた俺を見た途端に機嫌が悪くなったと言う。

「ふっ、悋気を起こすほどには俺のことが気になるようになったか?」

女を落とす事など簡単だと思っていたが、伽耶はなかなか一筋縄ではいかん。
だからこそ、この初めての感覚を俺は楽しんでいる。

次はどんな手で奴を追い詰めあの顔を困らせ赤く染めてやるか…
戦の策を練る以外に愉快だと思える事ができるとは思わなかったが、奴にはまだまだ俺を楽しませてもらわねばならん。







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