第7章 俺のものと言う意味
「?どうしたの?伽耶様」
私の視線の先を蘭丸君が追う。
「あ、信長様」
そう言った後、蘭丸君の顔は「あっ!」と驚いて、そして申し訳なさそうに振り返り、私の目を両手で覆って来た。
「伽耶様、見ちゃダメ」
こんな仕草も可愛いくてきゅんとしてしまう所だけど、それよりも先にドクンと胸が大きく跳ねて私は固まっていた。
私と蘭丸君が見たのは、信長様と女性が一緒にいる所…
「蘭丸君、大丈夫だよ。全然気にしてないから」
蘭丸君の手を退けてもう一度さっき見た光景を確認する。
茶屋の軒下の長椅子に並んで座る信長様とその女性は、ベッタリと寄り添いあっている。
(何あれ!?)
それが最初に込み上げて来た感情。
綺麗な黒髪を垂らした女性は少し着崩した着物姿がとても色っぽくて綺麗で、信長様の腕に抱きついてもたれ掛かり熱い視線で信長様を見つめている。
信長様は…それを拒否するわけでもなく自然と受け止めてお茶を飲んでいた。
(……なんだ、彼女いるじゃん)
「蘭丸君、これで分かったでしょ?私と信長様が恋仲じゃないって…」
「え〜、何でそうなるの?」
蘭丸君はおかしな質問を返して来た。
「何でって、今目の前にいるのが信長様のお相手でしょ?」
(あんなに白昼堂々とくっついててそれ以外の何だって言うの?)
「あ、伽耶様勘違いしてる?安心して、あの人は遊女屋のお姉さんだよ」
「え?」
蘭丸君の言葉に心が急激に冷えた。
(そう言う遊びを…する人なんだ?)
大地もよく女の人のいる店に行っては、仕事の付き合いだと言い訳をして喧嘩になった。私が男の人にして欲しくない行動の一つだ。
「っ、別に信長様が誰といようが私には関係ないよ。さっきも言った通り、私はここには旅できてるだけで、信長様とは恋仲でもなんでもないから。それにもし恋仲だとして、そんな相手がいるに他の女の人とあんな所で戯れたりしないでしょ!」
「んーーー、それはそうだけど…」
「それにね、信長様とはある賭けをしていて…だからそれが原因でちょっとみんなに勘違いされてるんだと思う」
そうだ。私と信長様は好きになるかならないかの賭けをしている。だから、信長様が私に優しくするのは賭けに勝つためとして当たり前のこと…