第7章 俺のものと言う意味
「うーん、とは言えやっぱり違和感があるなぁ」
着物を納めに行くため城を出て歩き始めたものの、着物を両手に抱えるとどうしても懐剣が胸を押してきて違和感しかない。
本当は信長様の見てないところで取り出そうと思ってたのに、さっきの秀吉さんの話を聞いてしまったから何だかそれをするのが躊躇われて、結局は言う事を聞いている形になっている。
「現代なら銃刀法違反で捕まっちゃうよ」
本物の刀を身につける日が来るとは思っても見なかった。
「伽耶様〜」
ブツブツ言いながら歩いていると、お城の方から誰かが私の名前を呼んで走ってきた。
「ん?誰?」
「伽耶様待って〜」
目を凝らして見ると今朝の美少年、蘭丸君が走ってこっちへやって来る。
「蘭丸君…?」
チラッと見ただけでも美少年だった蘭丸君は、目の前に来たらもっとキラキラ美少年だった。
「伽耶様、俺今朝のお礼をまだ言えてなかったから」
彼はどうやら今朝のお礼を言うために走って来てくれたらしい。
「それを伝えに来てくれたの?ありがとう。でもそれより、あの、蘭丸君ごめんね?私のせいでご飯しばらく食べられなくなっちゃって」
(今思えばお城の掃除とかでも良かったのに)
「そんなことないよ。一生食べられなくなる所を助けてもらったんだもん、ありがとう伽耶様」
三成君の笑顔が爽やかエンジェルスマイルなら、蘭丸君はキラキラアイドルスマイルだ。
「そう言ってくれてありがとう。短い間だけど、宜しくね」
「え?短いって…、伽耶様どこかへ行っちゃうの?」
「私、この安土には旅行…えっと、旅で来てるだけで、あとふた月で故郷に帰るって決まってるから…だから短い間だけど仲良くしてもらえると嬉しいです」
「え〜、伽耶様ずっとここにいないの?」
「うん…」
「なーんだ残念」
「私も…せっかくお知り合いになれたのに寂しいよ」
旅先で出会ったと言っても、ここで出会った人たちとはもう連絡を取り合う事はスマホであれ手紙であれ、どんな手段を使っても無理なんだ。