第7章 俺のものと言う意味
「っ……い、いつかセクハラで訴えますからねっ!」
「楽しみだな」
「失礼しますっ!」
(悔しい、悔しいっ!見た?あの俺様な顔っ!私が本気で怒ってないって思ってる!抱きしめるだけでもアウトなのに耳カプって、どんだけよ!)
天主を降りる階段をどんどんとわざと音を立てて降りた。でもきっとそんな音を聞きながら信長様は笑ってるのかと思うとまた悔しくなった。
「おい、伽耶、廊下や階段は静かにな」
あまりの音に秀吉さんが注意しにきた。
「あ、ごめんなさい」
「おっ、それ、信長様から頂いたのか?」
秀吉さんが、胸の懐剣に気が付いた。
「あ、うん。要らないって言ったんだけど…」
「こら、失礼な事を言うな。その懐剣は信長様自らが伽耶の為に選んだ貴重な懐剣だ」
「そうなの…?」
「お前、ちゃんと手に持ってみたのか?」
「それは、さっきちょっと持ったけど…」
(それ以降は変なことされてそれどころじゃなかったし…)
「もっとちゃんと手に持って感じてみろ、お前でも扱えるように軽くて、恐怖を感じさせないよう細工の綺麗な物を選ばれてる」
そう言われて懐剣を手に取って改めて見た。
軽さは、これ以外を知らないから正直わからなかったけど、確かに鞘も柄も全てに綺麗な細工が施されて宝石箱みたいに見えた。
(わざわざ私のために…?)
「あの、秀吉さん」
「なんだ」
「秀吉さんは、どんな相手に”俺のもの”って言いますか?」
秀吉さんなら、恋人でもない相手に”俺のもの”発言をする信長様のことが分かるかもしれない。
「おっ、お前もようやく信長様に興味を持ってくれたか?」
「ち、違いますっ、友達が、そう、友達が恋仲でもない相手に俺のもの呼ばわりされて困ってるって相談を受けたから、それで…」
「そうか、友達が…だな?」
「うう、今日の秀吉さんはなんだかイジワルです。広間でも信長様に叱られるって言って、揶揄ったりして…」
(イジワルをするのは光秀さんだけだと思ってたのに…)