第7章 俺のものと言う意味
「貴様に渡す物がある」
「渡す物?お叱りじゃなくて…?」
「なぜ俺が貴様を叱らねばならん?」
「え?だってさっき…」
じーっと信長様を見るけど、本当に叱る気は無いのか、訳がわからないと言った顔をしている。
(うーー、みんなの嘘つきっ)
きっとみんなに揶揄われたんだ。
「じっとしていろ」
「?」
信長様の膝の上、私は言われた通りにじっとする。
スッ
信長様の手が、私の着物の袷に突然入れられた。
「!?なっ、何するんですかっ!」
身の危険を感じ、信長様の膝から慌てて飛び退いた。
「それを貴様にやる」
「なっ、人の胸に手を入れておいてやるって…えっ、やる?」
手を入れられた袷に違和感を感じて胸元を見れば…
「これ…」
「懐剣だ」
「懐剣?」
差し込まれた物(懐剣)を手にとり見れば、黒塗りの金銀細工が施されたとても綺麗な物。
だけど、鞘から抜けばキラリと刃が光った。
「うぉっ、危ないっ!」
思わず声が出た。
包丁より小さいけど、同じ刃物でも違う意味を持つ刃物は不気味に思えて、私はすぐに鞘に戻した。
「こんなの頂けませんし必要ありません」
「貴様は隙だらけで危なっかしい。持っていろ」
「無理ですっ、持ってるだけで怪我しそうで怖いし、こんなのが胸元にいつもあると思うだけで落ち着きません」
鞘もついてるから結構な太さだし、異物感半端ない。
「伽耶」
信長様は私の腕を優しく引いてまた膝の上に乗せた。
いつもは強引なのに、急に優しくされると抵抗することも忘れてしまい、私はすっぽりと信長様の腕に包まれた。
「信長様…?」
ドクドクドクと、耳に心臓があるんじゃないかと言うくらい騒がしく鳴り響く。
「使えとは言っておらん。護身用に持っていろと言っておる」
「そ、それだけでも嫌です」
「強情だな。嫌いではないが今回は聞いてもらう。貴様をいつでも助けてやれるとは限らんからな」
声が近くて耳に吐息がかかる。
「…っ、それでも嫌だって言ったら?」
「聞かせるまでだ」
「えっ?」