第7章 俺のものと言う意味
「ううっ、ミスをして部長のデスクに呼ばれた時よりも嫌だな」
この間の”大たわけっ”がまだ効いてる私の体はブルッと震えた。
「信長様、伽耶です」
現代人の癖なのか、襖の前に来るとノックしたくなる衝動を抑えて声を張る。
「入れ」
「失礼します」
部屋へ入ると、信長様はもう仕事をしていた。
「こっちへ来い」
書簡から視線だけを私に向け来いと言う。
「?は、はい」
目ヂカラ半端ない信長様の視線にビクビクしながらとりあえず机の前まで移動した。
「そこじゃない。こっちへ来い」
信長様は書簡を置いて、目の前まで来いと命じてくる。
(ああ、そう言えば、この命令口調も不快じゃなくなったな…。って言うかそれ以外の信長様がもう想像できない)
人にされた事のない命令口調が、信長様とは当たり前になってることに気付いた。
「来ました」
この距離はもう殴られるの決定!?
上半身を少し後ろに仰け反らして信長様の目の前に立った。
「ここに座れ」
信長様は自身の膝の上をぽんっと叩いた。
「は?」
「聞こえなかったのか、ここに座れ」
どうやら、聞き間違いではなかったらしい。
(怒られるはずなのに、なぜ膝上?)
「嫌です。何でですか?」
「命令だ。つべこべ言わずに座れっ!」
「わっ!」
腕を強引に引っ張られバランスを失った体は簡単に信長様の膝の上に落ちた。
「……っ、」
逃げ出せないように片腕が私をがっちりとホールドしてきて、体は急に熱くなった。
「離して下さい。これもうセクハラですよ」
「せくはら?」
「嫌がってる相手に無理やり変なことをする事です」
「なら問題ない。貴様を見ても顔を赤らめるだけで嫌そうには見えん」
「なっ、何をしれっと…」
「それに、俺が俺のものをどう愛でようが文句は言わせん」
「それはパワハラですっ!権力をかさに相手を力づくで従わせることですっ!」
「ふっ、貴様はまことによく吠える」
「ちょっ、人の話し聞いてます?」
(何でそこで余計に抱きしめるの!?)
「聞いておるから会話が成り立っておるだろう?」
「あ、そうか…って違う違うっ!用事っ、そう、私に用事があって呼んだんですよね?」
(そうだよ、こっちは叱られる覚悟で来たのにドキドキさせられるなんて聞いてないよ)