第7章 俺のものと言う意味
「伽耶、後で天主に来い」
ご飯を食べ終わり広間を出て行く際、信長様に呼び止められそう言われた。
「はい」
(何だろう?)
「あー、多分さっきの蘭丸の件でお叱りを受けると思うぞ?」
そう言ったのは秀吉さん。
「え?うそっ、何で?」
「まぁそうだな、さっきの蘭丸の件、本当は信長様の納得のいってない所だろうからな」
次は政宗。
「え、えっ?そうなの?」
「まぁ、殴られるくらいの覚悟で行けば大丈夫なんじゃないの?」
「家康までやめてよ。ねぇ、冗談だよね?」
「伽耶様、家康様は冗談を言う方ではありませんよ」
「三成、お前は入って来るな」
「冗談かどうかは、行けば分かる。まぁ、斬られて命を落とした時は、骨は拾ってやる」
「光秀さん、それもう死ぬ前提で話してますよね。そんなに信長様…怒ってました?」
(むしろ笑ってなかった?)
「まぁ、行けば分かる。待たせると火に油を注ぐことになるから早く行け」
「え〜、誰か一緒についてきてくれないの?」
「お前の蒔いた種だ。自分で何とかしてこい」
「うーー、分かりました」
煽られるだけ煽られ、私は憂鬱な気持ちで天主へと向かった。
〜〜〜〜〜
伽耶が去った後の大広間では武将達が笑いを堪え切れず吹き出した。
「ちょっと、脅し過ぎたな」
口火を切ったのは秀吉。
「完全にびびってましたね。伽耶」
家康も相槌を打つ。
「まぁ、たまには良いだろ。あいつは信長様にかなり甘やかされてる事に気づいてないからな」
「政宗の言う通り、小娘はもっと自分の発言の重さに気づくべきだ。後にも先にも、御館様がご自身の意見を変えたり他人の意見を聞き入れるなどはなかったからな」
「それ程に伽耶様はこの織田軍にとって重要な方なんですね」
「そうなりつつあるが…当の本人は全くその気がないのが問題だな」
秀吉が再び深く項垂れる。
「あの御館様に狙われて逃げられるはずがない。なに、まだ時間はあるさ」
光秀さんが大広間でニヤリと口角を上げている頃、怒られる事が決定だと思い込んでいる私は重ーーーい気持ちで天主への長い廊下を歩いていた。