第1章 不幸な出来事は続く?
「あの、教えて下さいっ!ここは一体どこであなたはなぜ鎧なんて着てるんですかっ?」
燃え盛る炎の熱が余計に不安な気持ちを昂らせる。
「ほぅ、それが貴様の手か…?」
「はっ?」
「あくまでも知らぬと言うのであれば教えてやる。ここは本能寺で俺は織田信長、この日ノ本をまもなく一つに束ねる男だ」
威厳に満ちた声とは、こう言う声を言うんだろうか…?威厳には満ちていたけど、言っていた事はかなりやばかったような…
(織田信長って……あの戦国大名の織田信長っ!?いやいや、そんな訳ないでしょ!でも、なかなかそんな思い切った名前…付けなくない…?)
鎧→しかもよく見れば帯刀にピルトルも?→そして名前は織田信長……?
頭が考えることに疲れて来たのか、良からぬ一つの思いがよぎり出した。
「…ちなみに、今は何年ですか?」
「ふっ、面白い。まだシラを切るか。まぁ良い。今は天正10年だ」
「っ………!」
天正なんて元号、本当は西暦何年なのかも知らない。けど、さっき石碑で見たばかりだから分かる。
「本当に…戦国時代なんだ………?」
(私…タイムスリップしたって事!?)
「そんな……」
あまりの衝撃に足の力が抜けた。
「おいっ!」
崩れ落ちそうなところをこの織田信長と名乗る男が腕を掴んで支えてくれた。
「………っ、」
嫌な事は重なるって本当だ。
失恋の次はタイムスリップ!?しかも過去に!?
「面白い女だ」
「え?」
男は、掴んでいた私の腕を引き寄せて顔を近づけた。
(あ、この人、目が笑ってない)
笑っているのに目が笑っていない男の顔はそれでもとても綺麗で、至近距離で見つめられて胸の辺りがドクンと跳ねた。
「貴様を安土に連れて行く」
「へっ?」
「三成っ!」
「信長様、お呼びでしょうか」
「この女を安土に連れて来い。オレの命を救った女だ。丁重に扱え」
「はっ、かしこまりました」
私の目の前で、私の事を私の意見を聞かずに話が進み纏まるのを初めて見た。