第1章 不幸な出来事は続く?
外に出てからは、とにかく呆然と燃え落ちて行く建物を眺めていた。
全くもって訳が分からない。
ほんの少し前まで、日中の明るい京都にいたはずだった事は、突然の雷雨で濡れた髪が教えてくれている。
なのに今は夜。しかも、人々の服装が明らかにおかしい。
「おい」
どうしてみんな…
「おい女っ!」
「えっ、はいっ」
太くて低い声が私を呼び戻す。
「その腕を離せっ!」
「えっ、あっ、ごめんなさい」
建屋から連れ出した男性の腕を私はまだ掴んだままだったみたいで、不機嫌な声に言われるがまま、手を離した。
「って言うか、大丈夫ですか?」
気になってその人の顔を見ると…
「……っ、大地っ!?」
私は、離した手で再びその人の腕を掴んで顔を近づけた。
「はっ?」
(違う…大地じゃない)
「あ……ごめんなさい。人違いを…」
一瞬、元彼の大地に見えたけど、よく見たら別人だ。それに大地はこんな、武士のような格好はしない……
「離せと言うに」
男は、今度こそ私の腕を不愉快そうに振り払った。
「俺を他の者と見間違えるなど、貴様…俺のことを知らんのか?」
まるで知っていて当たり前だと言う口調だけど、
「えっと…すみません、分かりません」
「………」
意外そうに私を見下ろす目の前の男性が誰なのかは知らないけど、やっぱり大地に似てる。顔がと言うよりは、背の高さとか醸し出す雰囲気とかが…、
「なるほど、俺に取り入ろうと近づいたか?」
「はぁっ!?」
どこをどう手繰り寄せればそうなるのか、目の前の人は確かに見惚れてしまうくらいに綺麗な顔をしているけど、自信過剰にもほどがあるっ!
「私はただあなたが炎の広がる部屋の中で倒れていて危ないと思ったから助けただけです。それに私は本当はそれどころじゃないんですっ!」
そうだよ、本当にそれどころじゃないっ!
ここは一体どこなの?この人は誰?何で鎧なんて着てるの?