第6章 本職
「伽耶、貴様ここに来るまでは何をしておった?」
上座から突然の質問が飛んできた。
「え?」
「聞けば貴様は、厨仕事では野菜の虫に悲鳴をあげ、竈門の火すら起こせぬと聞く。世話役を任せれば道に迷い、草履を履けば皮がめくれ血を流す。そして今朝のこの味噌汁だ。貴様は織田家縁の姫として扱うよう言ってある。無理をせず化粧や貝合わせをして日々を過ごしても構わん」
その通りなだけに、グサっと大きな矢で胸を貫かれたようなダメージを受けた。
(うう…突然の超ダメ出し、クリティカルヒットだわ…)
「それとも他に何かやりたい事があるなら申してみよ。貴様の得意とすることは何かあるのか?」
(確かに、ここに来てから私はあまり役には立ってないけど…、ここにいるのは三ヶ月間だから、できれば色々なことに挑戦しようと思ってたんだけど、反対に迷惑かけてるってことだよね…?)
「私の本職はデザイナーです」
「でざいなぁ?」
「はい。人々が着る着物の生地の柄を考えたり、着物そのものの新しい形を考えてそれを作る仕事です」
「着物を作る…針子と言う事か?」
「針子..そっか、はい。そうです針子に近いです」
「針子なら、城内にも専門の針子たちがいる。貴様が望むならその職につけるよう計らうが…」
「え、お針子の仕事をさせてもらえるんですかっ!」
(これは、願ってもないチャンス!近くにそんな魅力的な仕事があったなんて!)
「構わん。貴様の腕前を見せてもらおうか」
(なんて嬉しそうに、しかも意地悪な顔で言うのかしら)
「縫い物だけは本当に自信がありますから、失敗はしません」
(ゲームよりも何よりも、小さな頃から物作りばかりしてきたんだから)
「そうか、それは楽しみだな。秀吉、そのようにしてやれ」
「はっ!」
「あ、でも今までの世話役とご飯を作るのはそのままやらせて下さい。迷惑にならないように頑張りますから」
(世話役は慣れればきっとできるし、料理だって頑張って覚えたい)
「明日は、美味い味噌汁が飲めるんだろうな?」
「もちろんです」
「ふっ、楽しみだな」
こうして私は、大好きな縫い物のお仕事も手伝わせてもらえるようになった。