第30章 シークレットサンタ
急いで寝所へと入った私はプレゼントの準備に取り掛かった。
早くしないと今すぐにでもあの襖が開けられそうだ。
焦れば焦るほどモタついてしまい、しかもこのプレゼントには大きな勇気が必要なだけに、さっきの感動も引きずってか手がもつれて上手くいかない。
「伽耶」
焦れた声が向こうの部屋から私を呼ぶ。
ああ、タイムリミットが迫っている。
急いで部屋中の行燈を消して回り、一つだけ灯したままにして褥の上へと座った。
「信長様、お待たせしました」
緊張で声が少しうわずってしまったけど、そんな声を気にする人ではない信長様は、まるで襖の前で待ち構えていた様な速さで襖を開けた。
「……いやに暗いな」
そう言って部屋へと足を踏み入れた信長様は、私を見た途端に足を止めた。
「っ………」
(やっぱり驚くよね…)
「伽耶、貴様もしや……」
薄暗い部屋でも良く分かるほどに信長様は目を大きく見開いて私を凝視する。
「っ、はい。私からのクリスマスプレゼントは、私…自身です」
言い終わるや否や、カアっと顔中に熱が集まった。
(っ、言っちゃった、やっちゃった、本当に実行しちゃった……っ!)
もう引き返せない状況に、顔のみならず頭の先までもが熱くなった。
そう、私の信長様へのクリスマスプレゼントは私自身。
実はあの日、針子部屋で……
・・・
・・・・・
「うーん、確かに何を贈ろうね」
「私たち針子はどうしても着物とか身につけるものを縫って贈りがちだしねー」
私たちは、結局同じ所で行き詰まった。
うーーん、と悩んでいる時、一人の針子からものすごい案が飛び出した。
「あの…私たち自身を贈るってのはどうかな?」
その場はシーーーンと静まり返り、
「や、やだなぁ何言ってるの!」
「そうだよもう、びっくりするじゃない!」
と、大爆笑となり、
そして、
「…でも、それしかないかも……?」
違う針子の言葉でまたシーーーンと静まり返った。