第30章 シークレットサンタ
「男が女に首輪を贈る意味を貴様は知っておるのか?」
震える私の手に信長様は自身の手を添えてそんな質問をする。
「首輪を…贈る意味ですか?」
(なんか聞いたことあるけど…なんだったっけ?)
「男が女に首輪を贈るのは、その者を束縛、独占したいと言う意味があるからだそうだ」
うーーんと悩む私の耳元に、信長様は唇を寄せてそう呟いた。
「っ………!」
驚きの余り、信長様の唇が触れた耳を手で覆って体を少し離した。
「ふっ、どうした?」
余裕な笑みを浮かべるその表情は、完全に私の反応を楽しんでいる。
「っ、不意打ち過ぎます……」
束縛、独占なんて、好きでもない人から聞いたら危ない言葉でも、大好きな人から聞くとこんなにも心をフワフワに乱されてしまうなんて知らなかった。
「逃げるな。まだ全てを伝え終わってはおらん」
「まだ意味があるんですかっ!」
「この石にも意味はある」
信長様は私の胸元にあるガーネットを掴んで、再び私に顔を近づけた。
「古い伝承によると、この石は絆の証、誓いの石と呼ばれ、戦に出る恋人同士で贈り合い、再会を誓い合ったそうだ」
「そんな意味がこの石に?」
(それで、この宝石を選んでくれたの?)
「俺は迷信などは信じぬし、目に見えぬものなども信じた事はないが、貴様と共に過ごすようになって、蛙憑きや物怪など、この世は目に見えるものが全てではないと知った。たかが石ころだがこんな気持ちの伝え方も悪くないと思ってな」
「信長様……」
(これはきっと…褒められてる…よね?)
私の複雑な気持ちを払拭するように、信長様は私の顔中に口づけを落とす。