第30章 シークレットサンタ
〜その夜〜
夕餉と湯浴みを終えた私たちは天主で晩酌を始めた。
「今日は本当にありがとうございました」
空いた杯にお酒を注ぎ、私は信長様にお礼を伝える。
「子供達、良い顔してましたね」
本当に、プレゼントを開けた時の子供達の笑顔が今でも忘れられない。
「そうだな。貴様と同じで、子供は思っていることが顔に出るからな。それに民の喜ぶ顔を直接見ると言うのは悪くない」
意地悪を言った口は、ぐびっとお酒を飲み干した。
「意地悪言うと、注ぎませんよ」
お銚子を遠ざけるフリをすると、信長様はふっと笑って杯を膳に置いた。
「酒はもう良い。伽耶」
信長様はお膳を遠ざけて自身の前を広く開けると、ぽんっと膝を叩いて私の名を呼んだ。
(座れってことかな?)
色事の始まりの合図のようなその仕草に照れながらも、私は信長様の膝の上へとちょこんと座る。
すっと腕が回されて、私の体はすっぽりと信長様に包まれた。
「ぷれぜんと交換の時間だ」
信長様はそう言うと、私の首元に何かをかけた。
「ん?」
胸元にぶら下がるものを見ると、濃い赤みを帯びた宝石のついた綺麗なネックレスがかけられている!
「信長様、これ……!」
「ねっくれす。貴様の時代では首輪をそう呼ぶらしいな」
信長様はそう言って私の頬に軽い口づけを落とした。
ネックレスって呼ぶ事をどうして知っているのかが気にはなったけど、それ以上に大粒の石の方が気になった。
「この石ってもしかして…」
「柘榴(ざくろ)石だ。貴様の時代では何と言うかは知らんが」
「柘榴石…やっぱりガーネットっ!」
信長様の瞳の色によく似た美しい宝石の和名は柘榴石、洋名はガーネット。とっても素敵な宝石だ!
「これを、私に?」
「そうだ。貴様の白くて綺麗な肌に良く映える」
信長様は、今度は私の鎖骨の近くにチュッと口づけた。
大粒のガーネットは綺麗にカットされてゴールドのネックレスに繋がれている。
「こんな素敵なもの、頂いて良いんですか?」
短期間でこんな素敵なプレゼントを用意されるなんて思ってなかったから、ガーネットを握る手が感動で震えてしまう。