第30章 シークレットサンタ
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「信長様っ」
政宗から逃げた先はもちろん信長様の元。
綺麗に飾り付けられた大きなもみの木の下で、信長様は一人、沢山のプレゼントに囲まれて私を待ってくれていた。
「浮かぬ顔をしてどうした?」
笑顔を作ったつもりだったけど、信長様は私の不安定さにすぐ気がついた。
「え?…あ、政宗に揶揄われて」
大した事じゃありませんと、私はまた笑顔を作った。
「それだけか?変な事はされておらんだろうな」
疑いの視線を私に投げかけながらも、信長様は深くは追及せずに冗談で返してくれる。彼の優しい一面だ。
「ふふっ、政宗が聞いたら傷つきますよ」
「奴なら今頃厨で笑っておる。まぁ良い、来い」
肩を引かれ信長様の腕の中へ。
私の一番好きな場所。
「………」
あなたの事が、好きで好きでたまらない。
だから、あなたのためならばどんな事だって頑張れるし耐えられるって言いたい。
けど……
この日ノ本を一緒に背負うなんて事、私にできるのかな……?
「伽耶」
信長様は黙り込む私を覗き込み、優しく触れるだけのキスをする。
「……信長様、もう一度」
去って行こうとする恋人の袖を掴んでキスを強請れば、優しい恋人は目を細めて笑い、さっき以上のキスをしてくれる。
大きなもみの木の下、たくさんのプレゼントに囲まれてされるキスはとても幸せで、この先もずっと私だけにしかしてほくないと、大きな独占欲が心に広がって行く。
「続きは夜だ」
濡れた私の下唇を親指で押して、信長様は笑った。
あなたの事を誰よりも愛してる。
でも今はまだ、このままの二人の関係でいたい。
どれ程自分を磨けば信長様の横が相応しい人になれるのかなんて分からない。
いい子でいるから、がんばるから、もっともっと自分を磨くから…
だから神様、サンタ様、信長様とこの先もずっと一緒にいさせてください。
日が昇り明るくなると子供達が次々とやって来て、もみの木の下に置いてあったプレゼントはどんどん消えて行った。
そして夕方には全てのプレゼントが子供たちに渡り、シークレットサンタは大成功に終わった。