第30章 シークレットサンタ
「お前はどうなんだよ」
「何が?」
「信長様との関係だよ。天下人の女ともなれば色々と大変だろ?」
今度は探るような視線を政宗は投げる。
「大変なことは、これと言ってないよ。私は別に政務にはほとんど関わらないし…」
たまに嫉妬もするし羽目を外し過ぎて叱られる事もあるけど、付き合ってから今日まで楽しいしかない。
「今はな。恋仲でいられるうちは自由だがそのままの関係ってわけにはいかないだろ?」
そんな私の心を読んだかのように、政宗は真剣な口調でそう言った。
「どう言う意味?」
「織田家の繁栄とこの国の更なる発展と、信長様の背負われるものはとてつもなくデカい。無論その伴侶にもそれ相応の期待がのしかかる」
「っ………」
それは、分かっているようで一番分かっていない目を逸らしている事。
「見事に固まったな」
「そりゃ固まるよ」
「だがこのままの関係が続くとは、お前だって思ってないだろ?」
「思っては…ないよ。ただ、まだ付き合って一年ちょっとで、今がとても楽しいから」
信長様は本当に自然に私に付き合ってくれているから忘れがちだけど、いずれは向き合わなければいけないとは思ってる。
「まぁ子供でもできたら覚悟は決めるしかないだろ?こうやって子供達の世話をできるお前はいい親になりそうだしな」
私の頭をぽんっと撫でて、政宗は意味深な笑みを浮かべた。
「そんな、子供なんてまだ考えられないよ……」
子供は、出来ないように信長様がしてくれてる。なんて言えるわけもなく…
「あ、ちょっと外見てくるね」
政宗の手伝いに来たのに何一つ手伝う事なく、私は逃げるように台所(政宗)から逃げ出した。
〜台所の政宗〜
「ちょっと脅し過ぎたか?」
去って行く伽耶の足音を聞きながら、政宗は指で頭を軽く掻いた。
「まぁ大変なのは本当だからな。大袈裟に言ってやる方があいつにはちょうどいいか。すぐ逃げ出すからな。それにもう、逃げ出せない所まで来てるしな」
ククッと政宗は笑い、再び汁粉が焦げないように木ベラで優しく混ぜた。