第29章 収穫祭の珍事
500年先の未来から来た伽耶は、あまりこの時代の女どもが使う言葉は使わない。
それに、伽耶はいい意味で面倒くさい女で、気持ちが乗る前からこれ程前のめりに求めてくることはまず無い。
(いくら酒を飲んだとは言え、俺のモノを掴むなどあり得ぬな)
不思議に思い考えを巡らせると、伽耶が言っていた物怪の事を思い出した。
「なるほど…、はなから信じてなどいなかったが、まさか本当に現れるとはな」
奴の顔で急に迫られ我を失いかけたが、よくよく見れば、目の前の女は伽耶の姿をしておるが伽耶ではない事が分かる。
仕草や表情、話し方、何よりもあの触れたくてたまらなくさせる奴の甘い香りがしない。
「信長様、如何なさいました?」
欲を失いみるみるうちにやる気をなくして行く俺のモノを掴んだまま、目の前の女は怪訝そうな顔を向けた。
「伽耶、俺に抱かれたければ、貴様が俺をその気にさせねばならぬといつも言っておるであろう?」
「え?あの……」
(驚きと戸惑いの表情。物怪でもこのような顔をするのか…)
「貴様一人でやって見せよ。興が乗れば抱いてやる」
「一人で…ですか?」
「そうだ。いつものようにやれば良い」
いくら物怪と言えども、俺たちの日頃の営みは知る由もなかろう。愛しい女の姿に化けて出て来た罪は、しかと受けてもらう。
「分かりました」
女は納得したのか、その場で着物を脱ぐと秘所へと手を当て、悩ましげに俺を見つめながらコトを始めた。
(伽耶が見たら失神しそうだな)
「ああん、信長様ぁん」
本当に俺たちの仲を引き裂く為に現れたのかと疑いたくなるほどに、女は勝手に気持ちを上げて行く。
(伽耶が決してせぬ事をやらせてみたが、思った以上につまらんな)
同じ声に同じ顔だが、見れば見るほど興醒めて行く。
「あん、ああっ、信長様っ、」
(だがこれが本物の奴ならばどのようにするのであろうか?いや、その前に俺がそんな奴を前に我慢が効かなくなるであろうな)
偽物のつまらぬモノを見せられるたびに伽耶の事を思い出していると、重大な事に気がついた。