第28章 勝利のキス
(っ、何これっ!凄すぎないっ!?)
「敵襲か?」
信長様も口づけるのをやめて私を庇うように腕の中へと閉じ込めた。
「信長様違いますっ、敵襲じゃありません。私が煙玉を……」
「は?伽耶、貴様なにを……!」
「だって…恥ずかしくて……ゴホッ、ゴホッ!ごめんなさい」
想像以上の煙に喉も痛ければ、会場も敵襲じゃないかとざわつき出した。
「とりあえず騒ぎを収める。じっとしていろ」
「はい」
逞しい腕に抱きしめられたまま目を瞑った。
「皆の者しずまれっ!これは敵襲ではなく余興だ!」
信長様が声を張り上げるとざわついていた会場がぴたりと静まり、
「余興?」
「何の余興だ?」
今度はこの煙玉が何の余興なのかとざわつき出した。
「先ほどの手筒花火も、今夜空に打ち上がってる花火も、そしてこの煙も同じ花火である。煙だけと言うのも中々に面白かろう。存分に楽しむが良い」
《おおーーっ!》
な、なんか凄いこじつけっぽいけど、信長様が言うとそれらしく聞こえ、これも花火かぁと言う楽しそうな声が聞こえて来る。
「行くぞ」
「は、はいっ」
煙の中、信長様に手を引かれて会場を後にした。
暫く歩くと、信長様が肩を震わせて笑い出した。
「信長様?」
「それにしても煙玉とは…、貴様はいつも俺の予想を超えてくる。退屈する暇がない」
「……っ、ご迷惑をお掛けしました。でも本当はさっきの口づけの場で使うつもりじゃなくて、信長様以外の人が勝ってしまった時にこれを使って逃げるために持ってたんです」
「よほど俺に信用がないと見える」
笑いながらも信長様は少しだけムスっとした顔を見せる。(こんな時に不謹慎だけど、こう言う所も可愛くて好きだな、なんて思ってしまう)
「最初は不安でしたけど、途中からは信じようって努力はしたんです。これはただお守りみたいなもので…でも結局使ってしまって…ごめんなさい」
「構わん。それに都合よく貴様とあの場を抜け出せたからな」
「抜け出すつもりだったんですか?」
怒られると思ったのに、意外な反応…