第28章 勝利のキス
一つ、そして最後の一つがあまり間を空けずに弾けた。
会場がシーンと静まり返る。
(一体どっち!?)
松明の灯りだけとなった会場の中、息を呑んで二人を見つめていると、政宗がピューと口笛を吹いて手筒を地面へと置き、そして信長様はニヤリと口角を上げて燃え尽きた竹筒を上に突き上げた。
(信長様が勝ったっ!?)
《うぉぉぉーーーーっ!!》
大きな歓声が湧き起こると同時に花火が打ち上がり、会場を明るく照らし出した。
「信長様っ!」
堪え切れず信長様の元へと駆け出す。
「伽耶」
信長様は手に持っていた手筒をポーンと投げて、私に向かって手を広げた。
「信長様っ!んんっ!!」
抱きついた途端に口づけられた。
《わぁぁっっ!!》
それにより、さっき以上の歓声が湧き起こる。
「んっ… っ待っ…んぅ!」
勝利のキスとは私から軽くチュッとするだけだと思っていただけに、二人きりの、しかも夜にする様な舌の絡む口づけに、酔わされるよりも焦らされてしまう。
(これって、公開処刑ならぬ公開濃厚チュー?)
「ピューピュー!」
「いいぞ!もっとやれー」
「信長様、おめでとうございますっ!」
ヤジがあちらこちらから聞こえて頭が沸騰しそうだ。
「待って信長様っ!」
やっとのことで信長様の胸を押して唇を離したものの、
「待たん、寄越せ」
「んんっ!」
元の木阿弥。
そしてまた会場はわぁっ!と盛り上がる。
「んっ……」
(こんな口づけ…力が抜けちゃう)
力を削がれる前に何とかしようも身を捩っていると、佐助君からもらった煙玉の事を思い出した。
(そうだ、あれで目隠ししちゃえ!)
まだ続きそうな口づけをこれ以上会場の人たちに見られたくない私は、袂に入れていた煙玉を取り出してエイッと投げた。
ボンッと音がしてすぐに真っ白な煙に包まれた。
と言うか、思っている以上にすごい量の煙につつまれた。