第28章 勝利のキス
(本当に恥ずかしい。一体何をやってるんだ私は……!)
みんなあんなに一生懸命、しかも楽しそうにお祭りを盛り上げようとしてくれているのに……
「あー、去年の私はこんなんじゃなかったはずっ!」
……確か去年のお祭りの頃の私は、信長様の事が気になってはいたけど、まだ未来に帰りたい思いが強くて、でもあることがきっかけで、この日ノ本を変えると言う信長様の大きな目標を聞いて、そんな信長様の些細な益でも構わないから助けようって、思ってたはずだ。
あの夏祭りの日に信長様からキスをされて、気持ちが大きく揺らいだのを覚えてる。
「あれから、もう一年も経ったんだ」
色々なことがあったけど、信長様を思う気持ちは変わらない。ううん、あの頃よりもっと好きになってる。
「だから…信長様以外の人なんて考えられないんだもん」
でも、みんなお祭りを盛り上げるために頑張ってるし、楽しみにしてるんだから、私もできうる限りの協力はするべきだ。
「じゃあ残された道は、やっぱり信長様を信じる事」
俺を信じろって言ってくれたし、いつだって私が危機に陥った時は、ヒーローのように現れて助けてくれた。だからきっと今回も勝ってくれるはず。
「うん。そうだよ。絶対そう」
よし、なんだか心が前向きになって来た。
夏の風物詩であるお祭りは私も大好きだし楽しまなきゃ損だよね。
そう考えれば私の中の迷いや黒い感情はどんどん晴れて、スッと心が軽くなって行く。
「よし、帰ろう」
気持ちを新たに、私はお城へ戻った。
〜その夜〜
「思ったよりもすっきりとした顔をしておるな」
夜、湯浴みを済ませて信長様の部屋へ行くと、脇息にもたれ掛かってお酒を飲んでいた信長様は、私を見るなり残念そうにそう言って笑った。
(政宗達から昼間の事を聞いたのかな?)
「何か、聞きましたか?」
信長様の近くへ行くと腕を掴まれて、信長様の膝の上へと乗せられた。