第28章 勝利のキス
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煙玉を手に入れた私は子共たちに会いにお寺へ来ていた。
「それにしても、良い物もらっちゃったな」
これで何とかなると思うと、お寺の階段を登る足取りも軽くなるというもの。
「…でも待てよ。あの野性の勘の持ち主の政宗と、考えてる事なぜか全て読まれてしまう光秀さんに、この煙玉作戦が通用するかな……?」
佐助君の忍者力を疑うわけじゃないけど…、あの二人の鋭さは尋常じゃないのも確かなわけで……
「あーもう、どうせなら雨でも降って中止になってくれれば良いのに」
そんな事を思いながら階段を登り切ると、子供達が境内に出て何かを軒下に吊るしていた。
「みんなー、何してるのーっ?」
「あっ、お姉ちゃん!見てみて!みんなで”てるてる坊主”を作って吊り下げてるんだよっ!」
子供の一人が私の元へ走って来てくれて、てるてる坊主を渡してくれた。
「てるてる坊主を?どうして?」
子供が渡してくれたてるてる坊主を受け取りそう質問すると、
「もちろん、お祭りの日が晴れますようにってお願いするためだよ。それはお姉ちゃんのだよ。一緒に吊そう」
ズキンッ!
「う、うん」
胸が、思いっきり抉られた。
私の顔に似せて作ってくれたであろう”てるてる坊主”が、私を睨んでいる気がした。
(私ったら、なんて事を思ってしまったんだっ!?)
こんなにお祭りを楽しみにしている子供たちの気持ちを考えずに、悪天候で中止になれば良いなんて思うなんてっ!
「もう頭にツノが生えてるのかも……」
目が吊り上がってるのも、悪い顔してるのも、全部本当だ。こんな、自分勝手な事ばかり考えてるんだから……
去年は子供たちを喜ばせたくて必死でお祭りの準備をしたのに。
「ごめんね」
「どうしたの?ほら、お姉ちゃんも一緒にてるてる坊主吊るして、晴れにして下さいってお願いしよっ!」
「うん。本当に、晴れると良いね」
パンッと両頬を叩いて自分の中にある邪心を払った。
「よしっ、みんなで晴れるようにたくさんお祈りしようっ!」
用意してくれたというてるてる坊主を一緒に軒下に吊るした後は、子供達と汗だくになって遊んで、頭を空っぽにした。